昨今、デジタル化の波は私たちの家計管理のあり方を大きく変えました。その一方で、本人が気づかないうちに「見えない支出」が積み重なり、家計を圧迫するケースが後を絶ちません。ある女性のケースから、現代特有の支出の落とし穴をみていきます。
どうして、こんなことに…。年金月12万円・74歳のおひとり様女性、貯金通帳に衝撃。身に覚えのない「支出の正体」 (※写真はイメージです/PIXTA)

ATMで目にした「見慣れない」項目

東京都内で一人暮らしを送る中村和子さん(74歳・仮名)は、数年前に夫を亡くして以来、月12万円の年金とわずかな蓄えを切り崩しながら、慎ましくも平穏な生活を送ってきました。

 

「質素倹約。それでも毎月数千円でも貯金に回すのが楽しみだったんです」

 

そんな中村さんが異変に気づいたのは、昨年の秋のこと。いつものようにATMで記帳した際、通帳に見慣れない引き落としが並んでいることに目が留まりました。

 

「何これ……。覚えがないのに、お金が減ってる」

 

金額は1,000円から3,000円程度と、一回分は決して大きくありません。

 

「最初は何かの会費かなと。昔入ったものかもしれないと思って、そのままにしてしまいました」

 

しかし、数ヵ月経っても引き落としは止まらず、合計額は1万円を超えました。不審に思った中村さんが銀行の窓口を訪ねると、そこで告げられたのは、複数のサブスクリプション(継続課金)契約という実態でした。

 

銀行の調査で判明したのは、動画配信、スマートフォンのセキュリティ、写真保存サービスなど、総額でおよそ4万円に及ぶ支出でした。いずれもスマートフォン購入時や機種変更の際に、本人が手続きした可能性が高いといいます。

 

契約方法: すべてオンラインで、紙の控えは存在しません。

通知: メールで届いていましたが、中村さんは「広告」だと思い込み、開封していませんでした。

期間: 契約は1年以上前から続いていました。

 

「説明されたと思うんです。でも、全部必要だと思ってしまって。メールは大事な連絡だけ来るものだと思っていました」

 

中村さんはスマートフォンの操作に不慣れという自覚はありましたが、日常生活に支障はありませんでした。だからこそ、自分の預かり知らないところで固定費が積み重なっていた事実に、強い衝撃を受けました。

 

銀行の担当者によれば、高齢者を中心に同様の相談が急増しているといいます。「少額」「複数」「継続」という特徴があり、通帳の項目名だけではサービス内容を特定しにくいことが、発見を遅らせる要因となっています。中村さんは現在、銀行から取り寄せた引き落とし一覧を毎月確認し、家族と家計を共有するアプリを導入して対策を講じています。

 

「だまされたというより、分からないまま進んでいた感じです。減っていたことより、気づけなかったことが一番不安でした」

 

特別な浪費をせず、「普通に生活している」つもりでも、デジタル上の契約が家計の固定費を押し上げていく――現代特有の「把握しにくい支出」のリスクを浮き彫りにしています。