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親の介護で直面した「500万円」の食い違い
都内のメーカーを退職し、現在は再雇用で働く佐藤和男さん(65・仮名)は、妻と二人暮らしです。現役時代は平均以上の収入があり、住宅ローンも完済。教育費の支払いも終え、老後資金として3,000万円ほどの貯蓄があると考えていました。
「仕事が忙しかったこともあり、家計の詳細は妻に任せきりでした。自分名義の口座もいくつかありましたが、総額でいくらあるのか、正確な数字は把握していなかったんです」
その佐藤さんが、自分の資産状況を直視せざるを得なくなったのは、88歳になる母親の介護がきっかけでした。母親が有料老人ホームに入居することになり、佐藤さんは入居一時金や月々の費用を工面する必要に迫られました。親の預金だけでは足りない分を自分の資産から補填しようとした際、深刻な問題に気づきました。
まず「把握していた金額との乖離」。佐藤さんが「1,000万円はあるはず」と思っていた自分名義のメイン口座を確認したところ、残高は500万円ほどでした。過去数年間の引き落とし履歴を調べると、内容を忘れていた古い保険料の支払いや、年会費だけがかかっているクレジットカード、使途不明の支出が積み重なっていました。
次に「残高不足による振込不能」複数の口座に資金が分散していたため、急な支払いの際に特定の口座が残高不足になり、施設への支払いが滞る事態が発生しました。慌てて他の銀行へ向かいましたが、古い口座のためカードが磁気不良で使えず、窓口で再発行の手続きに数時間を費やすことになりました。
さらには「妻との関係悪化」。 「自分には貯金がある」と言い続けていた佐藤さんに対し、実際の残高を知った妻は大きなショックを受けました。「今後の生活設計が狂ってしまう」と責められ、夫婦の間で介護の方針を話し合う前に、家計の立て直しで数ヶ月間、険悪な空気が続きました。
「やらなかったというより、やるタイミングを決めなかった。その結果、妻に余計な不安をさせ、介護という大変な時期に家族をバラバラにしてしまいました」と佐藤さんは話します。