「思ったより…減るな」数字を見た夫が変わった日

状況が変化したきっかけは、些細な出来事でした。

車検費用と家電の買い替え、庭のウッドデッキの張り替えなどが重なり、恵子さんは定期預金を200万円取り崩しました。ATMの明細に印字された残高は、2,000万円台の半ば。リタイアしたときには「3,000万円あるから大丈夫」そう思ってきたはずなのに、“お金が減るスピード”を改めて実感したのです。

さらに 数日後、同年代の友人との何気ない会話が背中を押しました。

「うちはもう毎月貯金の取り崩しよ。ちゃんと計算してみたら、思ったよりずっと早く減るんだから、怖いわよ」

危機感を強めた恵子さんは、自治体の広報で見かけた「人生100年時代の生活設計」という講座に参加してみることにしました。大げさな決意ではありません。「一度、数字で確認したい」それだけでした。

そこで知ったのが、将来にわたって「お金がどう入ってきて、どう出ていき、資産がどう変化するか」を時系列で見える化した表(キャッシュフロー表)です。

 ・何歳まで生きる前提で考えるか
 ・毎年いくら取り崩すのか
 ・資産はどのくらいのペースで減るのか
 ・医療費や介護費に備える余力はあるのか

帰宅後、恵子さんは隆一さんにこう切り出しました。

「あなたを責めたいわけじゃない。ただ、ちょっと一緒に見てほしいの」

講座で教わった簡易的な方法で試算してみると、現在のペースでは毎月約8万円の赤字。10年で約1,000万円が減る計算でした。

隆一さんは、しばらく黙って数字を見つめていました。

「思ったより…減るな」

この言葉に、恵子さんは胸がほっとするような気持ちになったといいます。