「老後は自然とお金を使わなくなる」――そう思っていませんか? レジャーも減り、食べる量も落ち着く。だから生活費も下がるはず、と。しかし実際には、現役時代の価値観がそのまま持ち込まれ、思わぬ支出が膨らむ家庭もあります。年金25万円、貯蓄3,000万円。それでも食費は月15万円。「健康なうちに美味しいものを」と語る60代夫の主張は正しいのか。その言葉の裏に潜む、見落としがちな落とし穴とは…… FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
今うまいものを食わないでどうする…年金2人暮らしで〈食費月15万円超〉。大食漢・食通の65歳夫の「飽くなき欲」に妻が抱いた恐怖【FPの助言 】
「老後は支出が減る」は、本当なのか?
総務省の家計調査(2024年)によると、高齢夫婦無職世帯の平均的な食費は月7万6,252円です。山本家の15万円は、そのほぼ倍にあたります。もちろん、平均に合わせる必要はありません。問題は「この支出が続いた場合、どうなるのか」を把握しているかどうかです。
仮に、食費が15万円、その他の生活費が18万円とすれば、支出は月33万円です。年金25万円との差額は、毎月8万円の赤字です。年間で96万円。10年で約1,000万円にもなります。
3,000万円の貯蓄があっても、老後の後半期に医療費や介護費が増えたとき、どれだけ残っているでしょうか。
老後はお金を使わなくなる、とよく言われます。確かに旅行や交際費は減るかもしれません。しかし一方で、在宅時間の増加や、長年培った価値観は簡単には変わりません。
特に、隆一さんにとって「食」は仕事の誇りであり、自分らしさでもあります。退職によって社会的役割が変わるなか、その拠り所がより強くなることもあるのです。これは単なる浪費というより、“自分らしさを手放さないための行為”と言ったほうが近いかもしれません。