国の「介護保険制度」を活用して入れる介護施設には、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老人保健施設)のほかに、医療依存度が高い方のための「介護療養型医療施設(療養病床)」が存在していました。ただし、“とある理由”から、同施設は2024年3月で廃止に……。その背景には、高齢社会における「お金」とケアの不均衡がありました。高島亜沙美氏著、西智弘氏監修の書籍『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)より、同施設が廃止となった理由と変わりゆく高齢者施設のシビアな現状についてみていきましょう。
「最後は自助努力で。」という冷徹な宣告…2024年に廃止された〈“介護保険”で入院できる安上がりな医療施設〉、国の非情な方針転換 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護療養型医療施設は2024年3月で廃止に

ここで、残念なお知らせです。こちらの介護療養型医療施設は2024年3月で廃止されました。実は、わたしの勤める病院にもこの病床があったんですが、2023年に廃止となり、他の病棟単位の扱いになりました。

 

高齢社会においては、医療依存度の高い高齢者はそのケアに大変お金がかかります。非情な言い方になりますが、そういう高齢者が回復して家で生活できるようになることは、まずありません。そこを問題視した国の方針なのでしょう。

 

「介護医療院」となったことで、自己負担額が増額

かわりに、介護医療院という施設の運用をはじめています。療養病床と比べて、自己負担額が増額していることに気づかれた方もいるかと思います。ケアはタダではなく、お金がかかるものでサービスの一種であるという価値観の変容のただ中に、わたしたちはいるのかもしれません

 

高齢社会を迎え数十年が経ち、積極的な治療が本人の人生や生活のために必ずしもならないことを実感しはじめた人たちが、積極的な治療を選択しなくなったことも理由に挙げられると思います。

 

医療処置であれば、(75歳以上の高齢者なら)国が8〜9割払ってくれますが、日々の食事やケアとなると、これは医療の範疇外になります。生活ですから。生活にかかるお金は、自分で払ってねというスタンスなのでしょう。国が声を大にして叫ぶことはまずないでしょうが、介護を受けるような状態になったのは、自助が足りなかったせいなんじゃない?というメッセージが、自己負担額の増加に結びついているのではないかと考えてしまいます。栄養管理、運動、睡眠など、若いうちからできること、実はたくさんあります。

 

実際に患者さんを見ていると、介護を受けないために自分で自分を律している人は、いらっしゃいます。自助ばかり言われると、国は何もしてくれないのか?とお怒りになる人もいそうですが、自分の心地いい状態をキープするには、自分を役立てるのが一番効率的でストレスが少ないです。自分好みの目玉焼きの焼き加減は、自分で作るのが一番早くて安上がり、そうじゃありませんか?