「医療」と「介護」の定義は明確に異なります。その違いを理解する上で最も重要なのが「医師の指示」という視点です。本記事では、高島亜沙美氏著、西智弘氏監修の書籍『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)より、混同されがちな医療・介護・看護の役割について、具体的な事例をもとに解説します。
「24時間点滴で栄養を摂る胃腸炎の大学生」と「介助で食事を摂る寝たきりの高齢者」この違いがわかれば納得…“医療”よりも“介護”のほうが安いワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

キーワードは「医師の指示」…〈医療・介護・看護〉の違い

ここで医療と介護について、言葉の定義をしておきたいと思います。医療保険制度と介護保険制度を同じように捉えている患者さんに出会ったこともありますので、念の為。

 

医療とは、医師の指示の下でおこなう治療や処置のこと

まず、医療とは「専門の医師が、健康診断や病気の予防対策をおこなったり、患者の診察治療に当たったりすること」(*)。個人的には、医師の指示の下でおこなう治療や処置のことだと思っています。そのため、実際におこなう人は医師じゃなくてもOKという認識です。

 

看護師や助産師が、医師の指示の下でおこなう医療行為、たくさんありますよね。わかりやすい例を挙げると点滴。もちろん、医師が実施することも可能ですが、臨床でそこに医師のマンパワーを割くのはもったいない。それだったら胃カメラをやったり心臓カテーテル検査をやったり、医師にしかできないことをやってもらいたい。胃カメラも心臓カテーテル検査も、看護師にはできませんからね。

 

点滴は、医師の指示があれば看護師でも実施可能です。そのため、点滴処置のほとんどを看護師がになっていると思われます(新生児科や小児科は除く)。

 

介護は、医師の指示がなくてもできる

続いて、介護とは、「病人・けが人や身体障害者、また高齢者などに医療・看護の支援を行ったり日常生活の面倒を見たりすること」(*)なんだか医療と似ているような定義ですが、明確に違う点があります。

 

それは、医師の指示がなくてもできるという点。たとえば、おむつ交換はとても大事な介護技術のひとつですが、医師の指示が必要なものではありません。

 

患者さんが排泄したタイミングで、援助者が適切に交換をする。1日1回替えればいい、というものではないですよね。女性だと、月経の際のナプキン交換でなんとなくイメージがつくかと思います。あれも、医療行為ではありません。個人的には、育児でできることは介護でもできる、と思っていただければいいと考えています。上記のおむつ交換をはじめ、食事を与えたり、お風呂に入れたり、車椅子に乗せたりという具合です。

 

看護は、医療と介護のあいだを行き来する

ちなみに、看護とは「怪我人や病人の手当て・世話をすること。看病」(*)厚生労働省の定義では、診療の補助と療養上の世話が看護師の役割となっています。

 

看護は医療と介護のあいだを、場面や状況で判断しながら行ったり来たりする技術なんです。

* 山田忠雄、倉持保男、上野善道、山田明雄、井島正博、笹原宏之 編『新明解国語辞典 第八判 青版』三省堂(2020年)