贅沢をしなければ年金だけで生活できる高齢者世帯は恵まれているといえますが、そこに、手を離れたと思っていた子どもが帰ってきたら……やむを得ない事情があったとしても、老後生活は一気に深刻なものになる可能性があります。今回はうつ病の息子に悩む老夫婦の事例から、受けられる公的支援の具体例などについてCFPの松田聡子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
60代でまた“子育て”するなんて…年金月20万円・資産3,000万円「すべて順調、計画通り」の老後が暗転。発端は40歳息子の「静かな告白」【CFPが解説】
増加する「心の病」と、親世代を襲う「共倒れ」の家計リスク
川村家のようなケースは、決して珍しいものではありません。厚生労働省の「患者調査」によると、精神疾患を有する総患者数は2023年には603.0万人に達しています。2017年時点では419.3万人だったため、6年で約180万人も増加した計算です。成人の精神疾患の患者数は年齢層による差はあまりなく、働き盛りも高齢者も同じように増加しています。
働き盛りの精神疾患患者の増加の背景には、職場のストレス、長時間労働、人間関係の悩みなどが考えられます。一度離職すると復職が困難という現実も、患者とその家族を苦しめているのです。
川村家のケースで経済的負担を試算してみましょう。豊さんの生活費が月5万円として、年間約60万円の追加支出が発生します。これが10年続けば600万円、20年続けば1,200万円です。3,000万円の資産があっても、子どもを養い続ければ大きく目減りしてしまうでしょう。
こうした状況は、「8050問題」の低年齢化ともいえます。8050(はちまるごーまる)問題とは、80代の親と50代の子どもが同居し、親の年金や資産に依存して生活している世帯で生じる問題を指します。従来は50代の子どもと80代の親の問題として語られてきましたが、川村家は「6040問題」のケースかもしれません。
いずれにしても親が高齢になるほど経済的にも体力的にも支援能力が低下するため、早い段階での対策が重要です。