病気やケガで働けなくなった現役世代を支える「障害年金」。しかし、その受給には「初診日」を証明するという高いハードルがあります。ある男性のケースを見ていきます。
54歳男性「たった1枚の紙」で年金が受け取れない衝撃。「障害年金」初診日ルールの隠れた落とし穴 (※写真はイメージです/PIXTA)

立証の負担と制度の課題

障害年金において初診日が重視されるのは、制度上の公平性を確保するためです。加入状況や保険料納付実績を基準にする以上、起点となる日付の特定は不可欠とされています。

 

一方で、精神疾患や神経変性疾患のように、発症から障害状態に至るまで長期間を要する病気では、初期受診が数十年前に遡ることも珍しくありません。会計検査院の過去の報告でも、初診日の特定が困難な事例が課題として指摘されています。

 

すべてのケースが不支給となるわけではなく、医学的関連性の判断や代替資料の積み重ねにより認定されるケースもあります。ただし、立証の負担は決して小さくないというのが現実です。

 

医療DXの進展により、将来的には生涯にわたる医療情報の共有が実現する可能性もあります。しかし現時点では、カルテ保存期間(原則5年)と、年金制度が求める証明期間との間にはギャップが存在します。将来、重い障害を負うことを想定して診察券や領収書を長期保管している人は多くはないでしょう。

 

制度の仕組み上、初診日の立証が受給の可否を左右する以上、「いつ、どの症状で医療機関を受診したか」という記録は、将来の生活を守る重要な手がかりとなる可能性があります。

 

障害年金制度は、働く世代の生活保障の柱であると同時に、「初診日」という見えにくい壁を抱えています。その存在を健康なうちから知っておくことは、万一の際の備えとなるはずです。