近年、単身高齢者や子どもが遠方に住む世帯の間で「身元保証サービス」の需要が増加しています。入院や施設入居の際に必要な身元保証を民間企業が請け負う仕組みですが、その裏側には、法整備が追いついていないゆえの落とし穴が潜んでいます。
「息子に迷惑をかけたくなかったのに」貯蓄4,000万円でも安心できない…年金月15万円・76歳女性、身元保証会社倒産で「保証人不在」の絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

急増する「身元保証」トラブルと、法規制の空白地帯

核家族化と未婚率の上昇を背景に、民間企業による身元保証ビジネスは拡大の一途を辿っています。しかし、実はこの業界には長らく明確な監督官庁や法規制が存在しませんでした。

 

総務省『身元保証等高齢者サポートサービスに関する調査(令和5年)』では、利用者が事業者に支払う契約金や預託金について、保全措置や管理方法の開示が不十分な事例があることが指摘されています。特に、預託金を信託等により分別管理していないケースも見受けられ、事業者の経営状況によっては返還が困難となるリスクが懸念されています。つまり、預けた資金が十分に保全されていない場合、事業者の倒産等により返還されない可能性があるという構造的な課題が存在しているのです。

 

また、同調査や関連する消費生活相談の状況から、以下のようなリスクも浮き彫りになっています。

 

■継続性の不確実性

事業者の経営破綻等により、契約期間中であってもサービス提供が継続できなくなる可能性がある。

■医療同意の法的限界

手術等の医療同意については、民間事業者が法的に代理できる範囲には制約があり、現場で対応が困難となるケースも指摘されている。

■解約時の返還トラブル

契約内容の不透明さや説明不足に起因し、解約時に預託金が返還されないといった相談が消費生活センターに寄せられている。

 

こうした状況を受け、消費者庁は2024年に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定し、事業者が遵守すべき事項や留意点を示しました。

 

しかし、このガイドラインは法的拘束力を有するものではなく、既に契約を結んでいる高齢者が、当該事業者の遵守状況や財務健全性を個別に判断することは依然として容易ではありません。

 

「家族の代わりを金銭で買う」という選択肢は一見合理的ですが、事業者の経営実態を個人で見極めるのは非常に困難です。契約を検討する際は、預託金が信託口座で管理されているかを確認すると同時に、行政のセーフティネットを組み合わせて活用することが、リスク分散に繋がります。