長年連れ添った夫婦であっても、何らかの事情で別居が続き、実態として家庭が崩壊しているケースがあります。 一方で、籍を入れずに事実婚として、献身的にパートナーを支え続けるケースも少なくありません。もし、その男性が亡くなった場合、国から支払われる遺族年金は「戸籍上の妻」と「実態のある内縁の妻」のどちらに支払われるのでしょうか。
「死んでも籍は抜かない」別居15年の66歳妻と、同居10年の58歳内縁の妻。夫の死後、「遺族年金」を分けた決定打 (※写真はイメージです/PIXTA)

遺族年金の受給権を左右する「生計維持関係」の認定基準

遺族年金の受給権者を決定する際、法律上の妻(重婚的内縁関係における前妻)と、事実上の妻(内縁の妻)が対立した場合、重要視されるのが「生計維持関係」の有無です。

 

厚生労働省および日本年金機構の規定によれば、遺族年金を受給するには「亡くなった者によって生計を維持されていたこと」が要件となります。 この認定において、戸籍上の配偶者がいる場合、別居していても「生計維持関係が完全に途絶えている」ことが客観的に証明されない限り、原則として法律婚の妻が優先されます。

 

日本年金機構の「生計維持関係等の認定基準及び運用指針」に基づくと、法律婚が形骸化しているとみなされるには、以下の条件を総合的に判断します。

 

●夫婦としての共同生活の実態が消滅しており、復元の見込みがない。

●経済的依存関係(仕送り等)が完全に途絶えている。

●音信や訪問などの交流が全くない。

 

今回のケースで決定打となったのは、和夫さんから幸子さんへの「定期的な送金」でした。 過去の社会保険審査会による裁決事例(平成26年など)を見ても、20年以上の長期別居であっても、継続的な仕送りがある場合、法律上の妻の受給権が認められる傾向にあります。

 

また内縁の妻が受給権を得るためには、法律婚側との間に「離婚の合意」があったことを示す書類や、法律婚側がすでに別の人物と共同生活を送っているなどの、極めて強力な「関係破綻の証拠」が求められます。