(※写真はイメージです/PIXTA)

「クリニックを開業するなら、ゼロから理想のクリニックを作り上げたい!」多くの医師がこのように考え、土地を購入してクリニックを新築することを夢見ます。しかし、事業計画が不確かな段階での不動産への多額な投資は、その後の経営を極めて困難にするリスクがあります。とくに多額の借入金は、経営の自由度を奪い、最悪の場合、事業の継続を危険にさらす可能性があります。まずは、専門家と綿密な事業計画を立て、初期投資を抑えられる「賃貸」や「居抜き」といった選択肢を慎重に検討することが、成功への第一歩です。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

安易な判断が招く、資金計画の破綻・運転資金の枯渇のリスク

クリニックの開業には、不動産費用以外にも、医療機器の購入、内装工事、備品、そしてスタッフの人件費など、多額の費用がかかります。

 

土地購入や新築を選択すると、これらの費用だけでも多額の返済となるため、他の必要な資金が圧迫されかねません。

安易な土地購入・新築で、想定外の費用発生・資金ショートのリスク

仮に、郊外の土地を5,000万円で購入し、建物と内装工事に1億円をかけた場合、開業前にすでに1.5億円の投資が必要になります。このすべてをローンで賄うと、毎月の返済額は極めて高額になります。

 

さらに、不動産取得税・固定資産税といった毎年の固定費も重くのしかかります。開業当初は、患者数が安定しないことがほとんどです。想定よりも患者数が集まらない場合、多額のローン返済と高額な固定費が運転資金を急速に食いつぶし、最悪の場合、開業後数ヵ月で資金ショートに陥るリスクがあります。

適切な賃貸物件の利用なら、費用の圧縮が可能に

駅前の医療モールや、すでにクリニックだった物件(居抜き)を借りた場合、初期費用は遥かに抑えられます。敷金や保証金、内装工事費を含めても2,000~3,000万円程度に収まるケースが多く、手元に資金を残せます。

 

この余裕資金は、集客のための広告宣伝費、急な医療機器の修理、スタッフの給与など、クリニックを軌道に乗せるための重要な運転資金となります。

安易な土地購入・新築で、移転が困難に…

クリニックの成功は、何よりも「立地」が鍵となります。診療科目やターゲットとする患者層によって、最適な場所は異なります。しかし、事業計画が不確かな段階での土地購入は、後になって「こんなはずではなかった」という事態を引き起こします。

 

小児科・内科を開業するのに、車でのアクセスは良いものの、近くに小学校や公園がなく住宅街からも離れている土地を選んだ場合、車を持っていない患者様は来院しにくく、集客に苦戦するでしょう。

 

一度購入した土地は、簡単に場所を変えることはできません。地域にもよりますが、近年では建築資材や人件費高騰もあり建物と土地でおおよそ1~1.5億円の予算が必要となります。

適切な賃貸物件の利用なら、エリアの移動も容易

小児科・内科であれば、駅の近くや商業施設内で駐車場が確保できる物件や、団地やマンションが密集するエリアの物件を借りることで集客は見込めます。また、もし将来的に事業を拡大したり、別の診療科目を追加したりする必要が生じた場合でも、賃貸であれば比較的柔軟な対応が可能であり、医療機器購入や分院展開などの事業展開も容易となります。

安易な土地購入・新築で、経営の自由度の喪失

多額の借金は、その後の経営の自由度を大きく奪います。事業の成長に伴い、新たな医療機器の導入や、診療スペースの増設、人員増加など次のステップへの投資が必要になることがあります。

 

しかし、すでに多額の負債を抱えていると、金融機関からの追加融資を受けることが難しくなり、毎月のローン返済が経営を圧迫し、利益のほとんどが返済に消えてしまう「自転車操業」の状態に陥りがちです。これでは、経営改善のための投資や、スタッフの待遇改善にも手が回らなくなり、クリニックは成長ができず、場合によっては閉院のリスクにもなります。

まとめ

クリニック開業における安易な土地購入・建物建築は、1億円を超える初期投資を要するため、経営的には落とし穴となります。夢を追うことは素晴らしいですが、現実的なリスクを理解し、賢明な選択をすることがクリニック経営維持には不可欠です。

 

専門家(税理士やコンサルタント)と共に、綿密な事業計画を立てること、必要な医療機器やスタッフの人数などを正確に見積もること、初期投資を抑えられる「賃貸」「居抜き」といった選択肢を優先に検討することが、クリニックを成功に導き、開業の理念の1つである地域に根差した医療を提供し続けるためには重要になります。

 

 

武井 智昭
株式会社TTコンサルティング 医師