老親が住み慣れた自宅で暮らし続けることは、本人にとっても家族にとっても一つの理想です。しかし、そこには加齢による身体的な変化という避けられない壁が立ちはだかります。特に、これまで自分ですべてをこなしてきたという自負が強い親ほど、周囲の助けを受け入れることが難しく、限界を超えて無理をしてしまう傾向にあります。
もう無理なんだ…年金月17万円・82歳父、55歳息子からの同居提案を「バカにするな!」と一喝も、今年の正月、ポロリと弱音を吐いたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「まだ一人でやれる」と豪語していた父の異変

都内在住の山根浩司さん(55歳・仮名)。 この数年、北陸地方の実家で一人暮らしをする父・正雄さん(82歳・仮名)の今後について頭を悩ませてきました。 正雄さんは元技術職で、定年後は年金を月17万円受給。経済的に心配はありませんが、問題は非常に頑固な性格です。

 

「父も80を超えていますから、一人暮らしは不安。何度も『こっち(東京)で一緒に住もう』と持ち掛けたものの、そのたびに、『バカにするな! 自分の面倒くらい自分で見られる。ここ(北陸の自宅)を離れるつもりはない』と怒鳴られて。話し合いにすらなりませんでした」

 

昔ながらの頑固おやじ――そんな正雄さんに変化があったのは今年の正月。

 

「帰省をしたときに、庭を見て違和感を覚えました」

 

雪国である実家では、冬を前に「雪吊り」や「冬囲い」といった作業が欠かせず、正雄さんは毎年、自ら梯子をかけ、手際よく縄を張ってきました。 近所でも評判の美しい庭を守ることが、正雄さんにとってもプライドになっていたと浩司さんは振り返ります。

 

ところが、今年の正月に帰省した際、浩司さんは目を見張りました。 例年なら12月のうちに完璧に終わっているはずの冬囲いが、まったく手付かずのまま放置されていたのです。

 

「家に入って父を見るなり『どうしたんだ?』と尋ねると、どこか力が抜けたような表情をしていて」

 

理由を聞いても最初は話をはぐらかしてばかり。 しかしお酒が少し入ったとき、ポツリと本音を漏らしたといいます。

 

「浩司、もう無理なんだ。梯子を運ぼうとしたら腰が抜けるようでな。屋根に積もる雪を見ても、体が震えて動かないんだ。何とか自分でやろうと思ったんだが……やっぱり、業者に頼むしかないんだろうか」

 

あれほど強気だった正雄さんが、自分の体の限界を認めて言葉にした瞬間でした。 現在、同居に向けて話が進んでいるそうです。