(※写真はイメージです/PIXTA)
現場で広がる「手応えのなさ」
首都圏で製造業を営むA社長(50代)は、近年、経営の難しさを強く感じているという。
「売上自体は大きく落ち込んでいないものの、原材料費や人件費の上昇により利益率は低下しました。採用難も重なり、営業、現場管理、採用面接、資金繰りまでを一手に担わなければやっていけません。以前より忙しくなっているのに、経営が良くなっている実感は乏しい。何を優先すべきか判断が難しくなっています」
こうした声は、特定の業種に限らず、多くの中小企業で共通して聞かれる。
約8割が「自分の経営力に課題」と回答
株式会社フォーバルのGDXリサーチ研究所が実施した「2025年度第3回 中小企業経営実態調査」(全国の中小企業経営者1,570人対象)によると、79.1%が「自分の経営力に課題を感じている」と回答した。
内訳は、
・「非常に課題を感じている」30.4%
・「ある程度課題を感じている」48.7%
と、多くの経営者が現状の経営に強い問題意識を抱いている。
調査では、物価高や人手不足、金利上昇、国際情勢の不安定化など、経営判断を難しくする外部環境の変化が、経営者の不安感を高めている可能性があるという。
対応策として重視される「外部との接点」
調査によると、経営力の課題解決のための取り組みについて、最も多かったのは「専門家やコンサルタントに定期的に相談する」(44.2%)だった。次いで、「セミナーや研修に参加し、外部から学ぶ」(36.6%)、「異業種交流会へ参加し、人脈を広げる」(32.8%)と、外部との接点を積極的に持つ姿勢が目立った。
一方、「書籍や専門誌で独学する」は27.2%にとどまり、独学中心の経営スタイルから、外部知見を取り入れる方向へと意識が変化していることがうかがえる。
専門家活用層の85%が「効果を実感」
これらの取り組みについて、効果を感じているかを尋ねたところ、「専門家やコンサルタントに相談している」と答えた経営者の約85%が『効果があった』と回答した。
また、セミナー参加や異業種交流、書籍による学習においても、約8割が一定の効果を実感している。
前出のA社長も、「日々の業務に追われる状況から抜け出し、会社全体を見る余裕が生まれました。経営の優先順位を整理できたことが大きかったと感じています」と話すように、外部専門家の助言を受け、業務フローや資金管理を見直した結果、経営判断に使える時間が増えたという。
調査結果からは、外部知見の活用が経営改善に向けた有効な手段の1つとして認識されていることが読み取れる。
一方で、約2割の経営者は「課題を感じながらも、特段の対策が取れていない」と回答した。理由として最も多かったのが「時間的な余裕がない」(56.2%)だった。次いで、「他の業務が優先される」(41.4%)が続いた。
多くの中小企業では、経営者自身が現場業務に深く関与せざるを得ず、中長期的な経営戦略を検討する時間を確保しにくい構造があることが浮き彫りになっている。
「時間を確保する仕組み」が重要な論点に
同研究所は、こうした状況を踏まえ、
・業務のアウトソーシング
・権限委譲
・業務プロセスの自動化
・優先順位の明確化
といった「経営者の時間を確保するための仕組みづくり」の重要性を指摘する。
同研究所所長の平良学氏は、「経営者個人の努力に依存する経営には限界があります。外部の知見を取り入れ、考える時間を確保できる体制づくりが、今後の企業経営において重要な視点となるでしょう」と分析している。
調査結果からは、中小企業経営において、外部支援の活用や学習機会の確保が、経営改善の重要な選択肢として認識されつつある状況がうかがえる。
環境変化が激しい時代において、経営者が一人で抱え込まず、適切に外部リソースを活用できるかどうか。
それが、今後の中小企業経営における重要な論点の1つとなりそうだ。