(※写真はイメージです/PIXTA)

新患を「自然に増やす」クリニック経営は、患者様との信頼関係の形成はもちろん、スタッフ自身がクリニックに愛着を持ち、大切に考えることが重要です。本記事では、スタッフが理念に共感し、主体的に行動することで、プロモーションに頼らず安定した集患力を実現する仕組みづくりを解説します。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

新患が自然に増え続けるクリニックとは?

多くのクリニックは新規患者獲得のために、SEO対策(Webサイトを検索結果上位に表示させる施策)や、看板の設置といったプロモーションに多くのコストや時間を投じています。しかし、理想をいえばプロモーションにコストをかけず、新患が「自然に増え続ける」というのが究極の患者獲得方法でしょう。

 

このような患者獲得には、患者様の「リピート」と、満足感の高い診察体験から生まれるネットとリアル両者の「クチコミ」の好循環によって実現します。

 

この好循環の核となるのが「CRM(顧客関係管理)」です。CRMは患者様1人ひとりの情報を深く理解し、それぞれのニーズに合わせたきめ細やかな対応を行うことで満足度を高め、クリニックへの信頼・愛着を育む戦略を指します。

 

このCRMを強力に推進するのが、「クリニックの熱心なファン」となるスタッフです。クリニックの理念やサービスに心から共感し、その価値を自ら発信できるスタッフの存在こそが、新規患者の獲得につながります。

CRMの「第一歩」とは?

CRMの第一歩は、患者様一人ひとりの情報を詳細に把握・管理することです。氏名、年齢、連絡先、来院履歴、過去の診療内容、アレルギー情報、服用中の薬といった基本情報はもちろん、診察時の会話から得られる個人の嗜好、家族構成、趣味、触れてほしくないNG事項も詳細に記録します。

 

これらの患者様自身のパーソナルな情報と同時に、電話対応やネット対応時などのやり取りや、対応したスタッフ名も記録しておくことで、状況把握のみならず、次回以降の対応者がスムーズになり、一貫したサービスを提供できます。

 

たとえば、整形外科に来院した山登りが趣味の患者様には「最近の登山はどこに行きましたか?」「肩や膝の調子は問題ありませんか?」といった問いかけを、小児科では「そういえば〇〇ちゃんは今年年長さんですね」「そろそろMRワクチンやおたふくの予防接種の時期ですね」という声掛けをすることで、患者様は「覚えてくれている」という安心感と特別感を覚え、それが信頼関係の構築、ひいてはリピート率の上昇へとつながります。

患者体験の向上…記憶に残る「感動」を創出する

「また来たい」「このクリニックを家族や知人、会社などの同僚に紹介したい」と患者様に思ってもらうには、病気治療だけでなく、来院を通じて「心地よさ」や「感動」など、想定を超えた体験を提供する必要があります。

 

そのためには、CRM情報を活用し、医師以外にも、看護師・医療事務の全スタッフが一丸となって、個別化されたホスピタリティを提供することが不可欠です。

 

「〇〇様、本日は△△の症状はいかがですか?」

「〇〇ちゃん、今日は注射頑張ろうね!」

 

など、個別の状況に合わせた声かけや役割作りが重要です。

「もう一歩」踏み込んだサポート

内科で糖尿病と診断された治療中の患者様には、管理栄養士による食事指導の案内だけでなく、近所のスーパーで手軽に買える食材リストや、実生活における運動方法などの具体的なノウハウなど、患者様の生活に寄り添った具体的なアドバイスを提供します。

 

小児科では、夜間に急な症状悪化で悩む保護者向けに、「小児かかりつけ診療料」の算定項目となる、時間外でも電話・オンラインなどで対応できるサービスなど、他院より一歩抜きん出たサポート体制づくりを検討してみましょう。

 

患者満足度を向上させ、リピート・クチコミの好循環を生み出すには、スタッフ自身がクリニックの理念やサービスに心から共感し、そのクリニックで働くことに誇りを持っていることが大切です。スタッフ自身が「クリニックのファン」になれば、その熱意は患者様にも伝わります。そうすることで、共感した患者様が新しい患者様を呼び込む、集患力の強力な好循環が生まれます。

「自分のクリニック」という当事者意識の醸成

クリニックの代表・目玉商品となる「院長」は、自ら率先して動き、損得勘定なしのリーダーシップを発揮しましょう。院長のそのような行動がスタッフの心を動かし、結果、クリニック存在意義や価値提供の理念、ビジョン等がスタッフに伝播・共有されていきます。

 

その一環として、スタッフをクリニック運営の意思決定に参加させ、意見を組み入れることも重要です。たとえば、最低月1回のスタッフミーティングを行いましょう。そこで患者サービス改善策や新しい取り組みについて意見を募り、積極的に採用することで「自分たちの手でクリニックをよくしている」というスタッフたちの当事者意識が高められます。

スタッフの「ファン化」を促す教育・環境・インセンティブ

スタッフには、おもてなし力・ホスピタリティ・コミュニケーションスキルの研修が必要です。さまざまなロールプレイング、実際の患者様への対応を通じた振り返り・フィードバックにより、患者様の多様なニーズに対応できるスキルを磨きます。とくに共感的な傾聴スキル、クレームやトラブル対応におけるスタッフ間の連携は重要です。

 

院長に課された重要ミッションとして、働きやすい職場環境の整備があります。クリニックのスタッフの大半は女性であり、家庭の事情で急なお休み、遅刻・早退が発生することもあります。風通しのよい職場では、院長・事務長の采配のもと、スタッフ間で思いやりを持って早退・有給休暇取得などに便宜を図ることができます。

 

また、有形的なインセンティブも重要です。相互承認の文化ともされる職場では、よい仕事をしたスタッフに対して院長や同僚から積極的に感謝の言葉や具体的な賞賛を送る「サンクスカード」制度などの導入、ミーティング・朝礼でお互いを認め合うといった文化があります。それらに加え、経済的なインセンティブも導入しましょう。受診患者数の増加が一定数であればインセンティブとして加給をするなどの仕組みも、スタッフの患者呼び込みのモチベーション向上につながります。

 

同時に、質の高いサービス提供の実現には、人員配置の検証が重要です。短時間でも過度な負担はスタッフの疲弊を招きます。余裕ある人員配置と業務分担で、スタッフそれぞれのスキルや持ち味を活かしていきましょう。

スタッフによる「自然な」広報活動の推進

スタッフ自身が「クリニックのファン」になれば、SNSやリアルな友人・知人との会話の中で、意図せずともクリニックのよさを語るようになり、それがさらなる集患へとつながっていきます。

 

院長は、個人情報に配慮したうえで、クリニックのSNS配信(静止画・動画ともに)を奨励していきましょう。それらを通じ、スタッフが担当した院内イベントの様子や、日々の業務の中で感じたやりがいなどを共有します。

 

この段階になれば、クリニックへの誇りが醸成されていき、地域活動への参加への意欲や、他団体との協働の意識が芽生え、スタッフが「地域に貢献している」という誇りを感じられる機会を提供して、結果として「自然に増え続ける」クリニックの仕組みができあがります。

患者様の「感動」を創出し、リピートとクチコミの好循環を生み出す

新患が過度なプロモーションなしで増加する状態は、CRMを核とした患者様中心のクリニック運営と、クリニックの「ファン」となったスタッフの存在によって強固に支えられます。

 

患者様一人ひとりを深く理解し、期待を超えるサービスを提供することで、患者様の「感動」を創出し、リピートとクチコミの好循環を生み出す。この好循環を加速させるのは、クリニックの理念に共感し、自らその価値を伝えて行動できるスタッフです。

 

開院後は、CRMの導入と並行して、スタッフが「自分のクリニック」に誇りを持ち、その魅力を自然に広められる環境づくりに力を入れることで、選ばれ続けるクリニックになっていくでしょう。

 

 

武井 智昭
株式会社TTコンサルティング 医師