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データから見る高齢層の収支と、法的・現実的な「扶養」の境界線
過度に子に依存する親――こうした悩みに対し、法的な線引きはどうなっているのでしょうか。
民法第877条第1項には「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。しかし、この義務は無限ではありません。
法的に、親子間の扶養義務は「生活扶助義務」と呼ばれます。これは、自分の生活を維持したうえで、余力がある範囲で助けるべきという性質のものです。つまり、自分の家庭の教育費や住宅ローンを犠牲にしてまで、親の贅沢や借金を肩代わりする義務はありません。特に、親が自身で働く能力がある場合や、生活保護などの公的扶助を受ける余地がある場合は、子どもが無理な援助を続ける必要はないというのが法的な解釈の一般的傾向です。
こうしたケースでは電話を制限する、金銭のやり取りを一切断つなど、「物理的・心理的距離を置くこと」を推奨しています。しかし、距離を置くのもひと苦労というのが現実です。
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、美咲さんと同じ40代では14.4%の妻が、親・義親と同居。親と別居している場合、その半数以上は自宅から30分未満の距離に妻または夫の母親が住んでいるといいます。
また、厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯の約4割が「収入の100%が年金」という状況にあります。年金の伸びが物価上昇に追いつかないなか、高齢者の暮らしは厳しさを増している――佐藤さんのケースがずばりそうなのかはさておき、「子に頼らざるを得ない」という親世代も少なくないでしょう。
しかし、忘れてはならないのは、給与が伸び悩むなかで子世代の生活もまた、限界に近いということ。「親を見捨てるのか」という言葉は、責任感の強い子どもほど深く突き刺さるものの、自分の家庭を壊してまで差し出す援助は、もはや扶養ではなく「共倒れ」を助長するものになります。
物理的な距離が近く、心を鬼にすることが難しいからこそ、公的な窓口の活用が有効。自治体の福祉課や消費生活センター、ときには弁護士などの専門家に相談し、親子という「感情の枠組み」から、社会的な「支援の枠組み」へ移し替えること。それが、自分自身の家庭を守り、結果として親を破綻から救う唯一の選択肢になるはずです。