(※写真はイメージです/PIXTA)
事務職一筋の男が直面した、静かすぎる日常
都内の大手企業で長年事務職を務めてきた佐藤健一さん(60歳・仮名)。現在は、パート勤めをしている60代の妻と、アルバイトをしながら同居する20代の息子の3人暮らしです。既婚の娘には2人の孫がおり、年末年始やお盆の時期には帰省して顔を見せに来てくれるといいます。
定年時に受け取った退職金は2,000万円。さらにコツコツと貯めてきた預貯金は3,000万円を超えています。総務省『家計調査 貯蓄・負債編 2024年平均』によると、世帯主60歳以上の世帯における平均貯蓄額は2,522万円。佐藤さんはその約2倍の資産を保有していることになります。
さらに65歳からの年金見込み額は月18万円と、家計は盤石に見えます。一見すると平穏な老後ですが、佐藤さんの心は晴れません。
【世帯主60歳以上世帯の平均貯蓄】
平均貯蓄額…2,522万円
(内訳)
●金融機関外…19万円
●普通預金等…817万円
●定期預金等…795万円
●生命保険等…410万円
●有価証券…481万円(内訳…貸付信託・金銭信託…8万円、株式…260万円、債券…55万円、投資信託…158万円)
「毎朝、習慣で早く目が覚めてしまうんです。ストレッチをして、家内の手伝いで少し家事を済ませると、もう昼前。午後は読書やテレビ、録画した映画を観て過ごしますが、ふと時計を見るとまだ15時。この、何の手応えもない時間が、平均寿命から考えるとあと20年は続くのかと思うと恐怖すら感じます」
地域活動やボランティアに誘われることもありますが、佐藤さんは首を振り続けます。
「友人に誘われれば外出することもありますが、一人では出かけません。もともと人付き合いは苦手で、自分から新しい輪に飛び込む勇気もありません。やりたいことがない、やるべきこともない。そんな一日の長さを、どうにかして殺しているような毎日です」
妻は仕事をしたり、友人と遊びに行ったりと活動的ですが、それさえも佐藤さんには眩しすぎ、自身の不甲斐なさを強調させる要因になっているようです。
「40年近く仕事しかしてこなかった。定年後のことなんて、考える余裕もなかった。その結果がこれです。老後がこんなに長く感じるなんて、思ってもいませんでした」