長年勤めた会社から受け取った退職金2,000万円。「これで老後は安泰だ」と胸をなでおろした遠藤さん(仮名・70代)が、なぜ絶望の淵に立たされることになったのでしょうか。きっかけは、元同期の飲み会で知った思わぬ事実。妻に内緒で始めたことが、取り返しのつかない事態へと向かいます。今回は、退職金運用の落とし穴と失敗してしまった時の対処法について、FPの青山創星氏と一緒に考えていきましょう。
こんな老後のはずじゃなかったのに…退職金と貯蓄2,800万円が半減、妻も失った70代男性の後悔。転落の始まりは「元同期との飲み会」【FPの助言】
「50万円なら失敗しても大丈夫」慎重なスタートだったが…
遠藤さんはネットで投資について調べ始めました。積立投資は王道だが、自分には数十年待つ時間はない。とにかく早く遅れを取り戻したい……そんな彼の心を掴んだのが「仮想通貨(暗号資産)」でした。「仮想通貨で億り人(おくりびと)になった」「今からでも間に合う」といった記事や動画も溢れています。
「リスクがあることはわかっていました。でも、当時は退職金と貯金で2,800万円ありました。50万円なら失敗しても大きな痛手ではないと思ったんです」
タイミングよく、1ヵ月後の評価額は約10万円増。この右肩上がりのチャートが、遠藤さんの判断を狂わせたのです。
「『今が波に乗るチャンスだ』と思い、さらに50万円を追加。今度は100万円、さらに100万円を追加……。最終的に合計700万円を仮想通貨に投入していました」
一時期は900万円まで増え、遠藤さんは有頂天に。しかし、その後相場は一転。流れが一気に変わったのです。
パニック売りからFXへ、破滅への道筋
「900万円まで増えた資産が、800万円、700万円と目減りしていきました。毎晩眠れなくなって、朝起きるとまず価格をチェックする毎日でした」
相場の下落が続く中、遠藤さんは致命的な判断を下します。「このまま下がり続けたらすべてを失う」という恐怖から、損切りを決断したのです。投資した700万円は売却時には200万円になっていました。500万円の確定損失です。
しかし、売却後に相場は一時的に回復。「あと1ヵ月待てば損失は50万円程度だった」という後悔が、遠藤さんをさらに危険な投資へと駆り立てました。
「『短期間で損失を取り戻したい』という気持ちが抑えられませんでした。FXなら値動きがシンプルで、仮想通貨より分かりやすいと思ったんです。レバレッジを使えば一気に取り返せる――そう考えてしまいました」
気付けば、残った2,300万円のうち2,000万円をレバレッジの高いFXに投入していました。しかし、為替相場の急変で、気づいたときには強制ロスカットが発動。900万円の損失となり、結局、遠藤さんの手元には1,400万円だけが残ったのでした。