老後に差し掛かってから子どもが実家に戻ってくる、いわゆる「出戻り」は、一般的にネガティブに語られがちです。「老後資産が減る」「生活リズムが崩れる」「静かな余生が奪われる」――。そんな心配の声が真っ先に浮かぶ人も多いでしょう。確かに、経済的に自立していない子どもが戻ってくれば、家計への負担は避けられません。実際、親の年金に頼りきりになり、老後不安が一気に現実化するケースも少なくありません。しかし一方で、同居がプラスに働くケースも。ある家族の事例と共に、ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が“出戻り=不幸”にならないポイントを解説します。
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食べて、テレビを観て、寝るだけの毎日です…年金月21万円・70代年金夫婦の〈静かな老後〉が一変した日。きっかけは「出戻り長女の孫連れ帰還」【FPが解説】
不安から始まった同居も…娘と孫がもたらした「意外な変化」
同居を始める前は、これから生活がどう変わるのか、先の見通しは立ちませんでした。しかし、美咲さんと2歳になる孫の陽菜(ひな)ちゃんの存在が、家の空気を一変させることになりました。
フルタイム勤務に復帰した美咲さんに代わり、日中の育児は主に恵美子さん夫婦が担うことになりました。恵美子さんは、当初「自分に負担が偏りそう」と思ったといいますが、実際には違いました。
それは、正夫さんが意外なほど孫の世話をすること。元々可愛がってはいましたが、一緒に暮らすようになり「孫愛」が爆発したのです。
「じいじ」と呼ばれるたびに、顔が緩みっぱなし。天気が良ければ散歩に出かけ、近所の公園で遊び、絵本、積み木、毎日朝から晩まで孫育て。無口だった夫が、陽菜ちゃんの世話をきっかけに恵美子さんとも話すように。
孫育ては決して楽ではなく、体力も要ります。しかし、孫を中心に生活が回り始めたことで、家に「会話」が戻りました。家族で小さな旅行に行く機会も増えました。
もう一つ大きかったのが、長女の経済力でした。元夫から養育費を受け取りながら、彼女自身もフルタイムで年収480万円ほどを確保。家に月8万円、ボーナス月はさらに10万円を入れて、時には外食代や旅行代を出してくれることも。年金は二人合わせて21万円程度、資産1,500万円の夫婦二人暮らしよりも家計は安定したのです。
「食事をして、テレビを観て、寝るだけ……“お迎えを待つ”ような日々が恋しくなることは、今のところありません」
「お金の不安? うちの場合、それはほとんどない。むしろ助かってるよ」
夫婦は思いがけず笑いが絶えない毎日を送っているといいます。