巷で耳にする「高齢になると賃貸物件を借りるのは難しくなる」という説。これを聞いて不安になり、年金暮らしになる前に住宅を購入しようかと悩む人も少なくないでしょう。しかし、手持ちの資金ではなく「先々もらえるであろうお金」を頼りにローンを組むと、思わぬ事態により返済計画が狂う可能性もあります。今回は50代で組んだ住宅ローンの返済が苦しくなった60代夫婦の事例から、経済的に安定した老後のための選択肢をCFPの松田聡子氏が解説します。
「年寄りには家を貸したくないんだ」…52歳会社員に突きつけられた“冷徹なひと言”。慌てて〈3,500万円一軒家〉を購入も、11年後に直面した「まさかの事態」【CFPが解説】
住宅ローンに縛られないセカンドライフのための処方箋
正博さんのように、年金生活を目前にしてローンの重圧に直面した場合、どのような解決策があるのでしょうか。ここでは、考えられる方法を整理します。
1. 住み替えと賃貸の再検討
もっとも根本的な解決策は、今の家を売却し、身の丈に合った住まいに移ることです。
・メリット: ローンを完済し、固定資産税や修繕費の負担から解放され、売却益が出れば老後資金に充てられる。
・デメリット:希望の条件で売れるとは限らない。「高齢者は借りられない」という不安に対しては、前述の住宅セーフティネット法の活用やUR賃貸住宅のような高齢者が借りやすい物件を探すのが現実的です。
2. 「リバースモーゲージ」という選択肢
「今の家に住み続けたいが、毎月の返済額を減らしたい」という正博さん夫婦にとって、有力な候補となるのがリバースモーゲージです。リバースモーゲージとは、自宅を担保に融資を受ける住宅ローンの一種です。
通常の住宅ローンと違い、毎月の支払いは利息のみで、元金の返済は契約者が亡くなった後に自宅を売却して充てる仕組みです。自宅に住み続けながら、月々の返済負担を大幅に軽減できますが、以下のような注意点があります。
・担保評価額の制限:融資額は自宅の評価額の50〜70%程度で、評価額が低い物件では十分な資金を得られない可能性がある
・長生きリスク: 融資限度額に達すると、存命中に融資が止まる可能性がある
・金利上昇リスク: 変動金利が一般的で、金利が上がれば毎月の利息支払額が増える
・不動産価格の下落リスク: 土地の価値が下がると、融資限度額が引き下げられることがある
・相続への影響:相続人が自宅を残したい場合は、一括返済する資金を用意する必要がある
正博さんの場合、まずは現在の自宅の査定額を確認し、ローン残債を完済できるかの見込みを立てましょう。そのうえで、リバースモーゲージが利用可能か、あるいは賃貸に切り替えたほうが生涯の収支が安定するかをシミュレーションする必要があります。
いずれにしても住宅ローンの老後の返済に不安がある場合、早めに専門家に相談し、自分たちに合った解決策を見つけることが重要です。
松田聡子
CFP®