巷で耳にする「高齢になると賃貸物件を借りるのは難しくなる」という説。これを聞いて不安になり、年金暮らしになる前に住宅を購入しようかと悩む人も少なくないでしょう。しかし、手持ちの資金ではなく「先々もらえるであろうお金」を頼りにローンを組むと、思わぬ事態により返済計画が狂う可能性もあります。今回は50代で組んだ住宅ローンの返済が苦しくなった60代夫婦の事例から、経済的に安定した老後のための選択肢をCFPの松田聡子氏が解説します。
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「年寄りには家を貸したくないんだ」…52歳会社員に突きつけられた“冷徹なひと言”。慌てて〈3,500万円一軒家〉を購入も、11年後に直面した「まさかの事態」【CFPが解説】
こんなはずでは…老後に暗雲「まさかの落とし穴」
それは、勤務先の長年の業績悪化から制度が改定され、実際に受け取った退職金が1,200万円だったこと。65歳時点の住宅ローンの残債は約1,700万円で、正博さんは退職金で不足する分はそれまでに準備しようと考えていたのです。
1,200万円の退職金で、繰り上げ返済資金を別途500万円準備するのは簡単ではありません。転勤生活で貯蓄が難しかった秋山家では、同時に老後資金も準備しなくてはならないからです。
さらに、2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除。金融機関は住宅ローンの変動金利を引き上げ始め、秋山家の住宅ローン金利も、じわじわと上昇しています。
「このままでは月々の返済額がさらに増えるかもしれません。そうなれば年金生活になっても、返済が続いてしまいそうです」
正博さんの年金見込み額は月約14万円、仁美さんは月約8万円。2人合わせて月22万円程度です。そこから住宅ローン9万6,000円を払えば、残りは12万円ほど。突発的な出費も予想され、やりくりは極めて難しくなると考えられます。
「家を持ったために、かえって老後が不安になってしまうなんて……。今になって、賃貸のままだったらどうだったのか、あの時もっと考えるべきだったんじゃないかと、後悔しています」
正博さん夫婦は今、住宅ローンとどう向き合うべきか、真剣に悩んでいます。