50代からの住宅ローンが抱える3つの誤算と、高齢者賃貸の意外な真実

正博さん夫婦のように、「老後の住まいを確保したい」という一心で50代から住宅ローンを組むケースは珍しくありません。しかし、そこには現役時代には見えにくい、高齢期特有の3つの誤算が潜んでいます。

1. 完済時の年齢と60歳以降の収入の問題

50代でローンを組む際、多くの人が80歳完済などの長期計画を立て、それを「退職金で一括返済すればいい」と考えがちです。

しかし、金融広報中央委員会の「2023年家計の金融行動に関する世論調査」(二人以上世帯)によると、60代の世帯主がいる世帯でも、住宅ローン残高の平均は733万円にのぼります。定年後、再雇用や嘱託で年収が大幅にダウンしても、ローンの返済額は現役時代のままです。

正博さんのように手取り額の3割以上がローン返済に消える状態は、家計にとって非常にリスクが高い「返済困難予備軍」といえます。

2. 退職金と金利が想定外になるリスク

かつては「退職金でローン完済」が想定パターンでしたが、現代ではその前提が崩れつつあります。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によれば、退職金制度を取り巻く環境は年々厳しくなっています。

・退職金制度がない企業の増加: 2018年の19.5%から、2023年には24.8%へ 上昇
・給付額の減少: 大学・大学院卒の定年退職者の平均額は、2018年の1,983万円から、2023年には1,896万円へと、約90万円減少

これに加え、2024年のマイナス金利解除以降、変動金利が上昇し始め、返済額が増加し続けることも懸念されます。

3. 「高齢者は家を借りられない」という恐怖の正体

正博さんを家購入に突き動かした「高齢者は賃貸住宅を借りられなくなる」という不安には、一定の根拠があります。

国土交通省の「住宅セーフティネット制度の見直しについて 」によると、賃貸人の約7割が、高齢者の入居に対して拒否感を抱いているのが実情です。主な理由は、孤独死や残置物の処理、家賃滞納への不安です。

しかし、国もこの状況を放置しているわけではありません。2025年施行の改正「住宅セーフティネット法」 では、高齢者などの入居を拒まない住宅の登録制度を強化し、入居後の見守り支援を行う仕組みが拡充されました。

「家を借りられないから買う」という選択が、実は「老後の資金をすべて家に投じてしまう」という別のリスクを招いている可能性を、冷静に見極める必要があります。