40年間勤め上げた大手商社を定年退職した田中光彦さん(仮名・69歳)は、現在年金月30万円を受給しながら、投資で築いた2億5,000万円の資産を眺めて溜息をついています。「家族も家もある、お金が足りないという心配もない。なのに悩みが尽きない……」。同じような思いを抱えている方もいるかもしれません。FPの青山創星氏と一緒に、その心の奥底を探りながら、本当に豊かな老後とは何かを考えてみましょう。
これ以上増えてどうするんだよ…69歳元会社員、証券口座の残高「1日で50万円増」でも笑顔なし。資産2億5,000万円を持ちながら「苦悩の老後」を送るワケ【FPの助言】
FPが提案する「不安を和らげる出口戦略」
田中さんのような悩みに対して、まずは「資産の目的別分類」を提案します。
まずは資産を3つに分けること。①生活資金、②楽しみ資金、③相続資金です。田中さんの場合、①は年金で十分カバーできます。問題は②と③の境界が曖昧なことです。
具体的には、5,000万円などまとまった金額をリターンがプラスの銘柄から売却。「楽しみ資金」として銀行口座に切り分け、これは罪悪感なく使うと決めます。残りは相続資金として管理する。このように目的を明確化することで、心理的な障壁を下げられます。
長年かけて築いてきた投資資産を自らの判断で売却するのは簡単ではありません。だからこそ重要なのが、明確な理由付けをすること。「楽しみ資金」として目的を切り分けてしまえば、売却は浪費ではなく、人生の満足度を高めるための“計画的な資産活用”になります。
さらに、「取り崩しの自動化」、つまり毎月一定額を自動的に生活口座に振り替える仕組みを作ることも有効です。自分でいちいち売却ボタンを押す必要がなくなれば、「減らす恐怖」が和らぎます。投資信託の定期売却サービスを活用するのも有効です。
相続対策については、年間110万円までの贈与は非課税のため、息子2人に毎年220万円まで贈与可能です。10年続ければ2,200万円を無税で移転できます。田中さんの場合、69歳という年齢を考えると、早めに暦年贈与を始めるのも一考です。
また、この他にも、住宅取得等資金贈与、教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与などの非課税贈与制度もあります。ただし、要件が厳しかったり変更もあったりしますので、公的機関の窓口や専門家に相談するとよいでしょう。
大切なのは、『お金は使ってこそ価値がある』という発想の転換です。