配偶者との死別は、精神的な悲しみだけでなく、経済的な不安も同時に連れてきます。特に、「遺族年金」に対する誤った認識は、その後の生活設計を大きく狂わせる要因となりかねません。
年金月25万円・71歳夫が急逝。「遺族年金は亡夫の年金の4分の3」と聞いていた66歳妻、実際の年金額に衝撃「何かの間違いでは」 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫の年金、増えた分はどこに?…遺族年金の衝撃的な通知

悲しみのなかで葬儀を終え、美和子さんは年金事務所へ手続きに向かいました。これからの生活の頼みの綱は「遺族年金」です。

 

「私も難しい話はよくわからなくて。でも年金に詳しい友人が、だいぶ前ですが『遺族年金は夫の年金の4分の3だ』と教えてくれたのを覚えていたんです。主人の年金は25万円でしたから、その4分の3なら約18万7,000円。それに私の年金も合わせたら月25万円強となる。それだけあれば安心だと考えていたのですが……」

 

ところが、後日届いた年金額改定通知書を見て、美和子さんは血の気が引きました。そこに記されていた遺族厚生年金の額は、想定をはるかに下回る「約8万円」だったのです。

 

「目を疑いました。18万円もらえると思っていたのが、半分以下の8万円……。『何かの間違いでは』と年金事務所に電話をかけました」

 

そこで担当者から告げられたのは、あまりに非情な現実でした。美和子さんの皮算用は、「遺族年金の3つの勘違い」によって崩れ去ったのです。

 

勘違い①「夫の年金すべて」が対象ではない

まず、遺族年金は「国民年金」と「厚生年金」に分かれます。遺族厚生年金の計算ベースになるのは、夫の「厚生年金部分(報酬比例部分)」のみです。夫の年金に含まれていた「老齢基礎年金(約6万8,000円)」は、計算の対象外として切り捨てられます。

 

勘違い②「繰下げ増額分」は消滅する

これが最大の誤算でした。夫の年金「月25万円」は、70歳まで受給を遅らせたことで42%増額された数字です。しかし、遺族年金の算定においては、この増額分は一切考慮されません。 計算に使われるのは、あくまで「65歳時点で受け取るはずだった本来の金額」です。夫が寿命を削るようにして働いて増やした年金実績は、夫の死とともにリセットされてしまったのです。

 

勘違い③ 妻の厚生年金は「相殺」される

さらに追い打ちをかけたのが、「併給調整(へいきゅうちょうせい)」というルールです。 65歳以上の妻が遺族厚生年金を受け取る際、妻自身に老齢厚生年金の受給権(美和子さんの場合は月5,000円)があると、その全額が遺族年金から差し引かれます。

 

つまり、「自分の厚生年金(5,000円)」+「差額分の遺族年金(7万5,000円)」=「合計8万円」となり、手取り総額は遺族年金の満額と変わりません。美和子さんの「私の年金も足されるはず」という期待は、制度の壁に阻まれました。

 

こうして、月18万円を期待していた遺族年金は、月8万円という現実に変わりました。 「勘違い」と「無知」が招く老後破綻。夫(妻)亡き後の生活を守るために、制度の基本はおさえておきたいものです。

 

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