年末年始の帰省は、離れて暮らす親の老いを肌で感じる貴重な機会です。しかし、そこで待ち受けているのは、温かい団らんだけとは限りません。ふとしたきっかけで「誰が介護を担うのか」という現実的な問題に直面し、親子間にある「意識の決定的な違い」に愕然とするケースが後を絶たないのです。ある親子のケースをみていきます。
「お前が会社を辞めればいい」骨折した83歳父の暴論に52歳息子が絶句…正月帰省で露呈した、親子間の「介護意識」の決定的なズレ (※写真はイメージです/PIXTA)

親の「希望」と子の「現実」の乖離

親は「家族愛」や「長男の責任」を口にしますが、子の生活基盤や経済状況までは想像が及んでいないことが多々あります。佐藤さんのように、帰省して初めて「親の無謀な介護計画」に直面し、頭を抱える人は後を絶ちません。なぜ、こうした食い違いが起きるのでしょうか。

 

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護による『介護の担い手に関する意識調査』により、親と子の認識には埋めがたい溝があることが明らかになっています。

 

まず、「誰に介護をしてほしいか」という問いに対し、親側の約6割(59.8%)が「配偶者」と回答しています。佐藤さんのお父様のように、「妻(夫)がやるのが当然」と考える親世代は依然として多いのです。一方で、子ども側はどう考えているかというと、「長男が担うべき」(30.1%)、「長女が担うべき」(24.3%)と、半数以上が「子ども(自分たち)がやるもの」と答えています。

 

ここで恐ろしいのが、「老老介護」のリスクです。親が「配偶者に頼りたい」と願い、子どもが「自分たちがやらなきゃ」と抱え込む。その結果、外部のプロ(介護サービス)の手を借りるという選択肢が後回しにされがちです。調査でも、親側が「配偶者」に期待するあまり、共倒れになるリスクが指摘されています。

 

また、子ども側が「仕事と介護の両立」を危惧している(23.4%)のに対し、親側でそれを心配しているのはわずか7.4%にすぎないというデータも出ています。親は「何とかなる」と考えていても、子は「生活が破綻する」と危機感を持っている。この温度差こそが、話し合いを停滞させる最大の原因です。

 

年末年始は家族が集まる貴重な機会です。単に「元気?」と聞くだけでなく、「もしトイレやお風呂が一人でできなくなったら、誰に頼みたい?」と、具体的なシチュエーションを挙げて話し合ってみてください。

 

佐藤さんの事例のように、いざとなってからでは、冷静な判断はできません。親の「希望」と、子どもの「現実」をすり合わせることこそが、親孝行の第一歩といえるでしょう。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『帰省シーズンに浮かびあがる“介護の担い手”問題親の約6割は「配偶者」を希望で”老老介護”のリスクが浮き彫りに子は「長男・長女」が担うべきと親子間での意識差も明らかに』

 

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