株式会社AlbaLinkが実家から離れて暮らす500人を対象に実施した「実家に帰る頻度」の調査では、年1回・2回が4割近くを占めていました。また同調査では、約65%が「実家に積極的に帰りたい」と回答するなど、もっと頻繁に帰省したい人が多いようです。ただ、なかには、子や孫の帰省を“素直に喜べない親”も……。その原因と対策について、具体的な事例をもとにみていきましょう。
孫が生まれる前のほうが幸せでした…〈年金月23万円〉〈貯金3,000万円〉の60代夫婦、息子家族の帰省を「ストレスです」と断言するワケ
事態はさらにエスカレート
しかし、事態は悪化します。孫が走り回るようになると、怪我をさせてはいけないと目が離せず、落ち着いて座ってもいられません。
また食事の支度も、夫との2人分ならスーパーのお惣菜で簡単に済ますところ、息子一家がいるとなるとそうもいかず、朝昼晩の献立を考えるだけでもひと苦労。孫が帰るとどっと疲れ、寝込んでしまうこともありました。
負担がかかっているのは心身だけではありません。食費は普段の倍に膨らみ、孫の消耗品やレジャー費などを含め、帰省によって発生する費用が家計を圧迫します。
また節句やクリスマス、孫の誕生日、入園祝いなど、プレゼントやご祝儀を贈っていた結果、年金だけでは足りず、貯蓄を切り崩して生活せざるをえなくなっています。
「実家を無料の託児所だとでも思っているんでしょうか。かわいい孫のためならなんでもするつもりでしたが、お金もかかるし、体も疲れるし……こんなこと言いたくないですが、孫が生まれる前のほうが幸せでした」
そう肩を落とす佳代さんの表情には、「こんなはずじゃなかった」という失望がにじんでいました。
「ルールづくり」が必須
この事例の問題点は、佳代さん夫婦が本音を押し殺して「理想の祖父母像」を演じ続けた結果、息子夫婦による無自覚な“搾取”が定着してしまったことにあります。
この状況を改善するには、佳代さん夫婦が金銭負担や役割分担について「ルール」を定め、話し合いを提案する必要がありそうです。
育児の負担が大きくなり、帰省が喜べなくなっていること。帰省のたびに出費がかさみ、貯蓄を取り崩す事態になっている現状について率直に伝え、そのうえで「費用は折半」「消耗品は持参」といったルールを提案してみるとよいでしょう。
お金を「出したくない」のではなく、自分たちの老後資金を守るために「出せない」のだと正直に打ち明ければ、息子夫婦も「親に無理をさせている」という事実に気づくはずです。
育児や家事の丸投げについても、「帰省は月1回まで」「使った部屋は掃除して帰る」といった具体的な線引きをすることで、相手も実行に移しやすくなります。
もともと、孫が生まれる前は良好な関係だった息子夫婦ですから、適切な距離感があれば、また良好な関係性に戻れるかもしれません。