妻がハマった「生前整理」…家中の不用品を処分

神奈川県在住の 佐伯誠さん(74) と 妻・弘子さん(72) は、定年後も穏やかに暮らすごく普通の夫婦です。2人の老後資金は預貯金で約2,000万円。年金と合わせて日々の生活に困ることはありませんが、贅沢はせず、週に数回の散歩や近場の温泉が楽しみという典型的な“穏やかな老後世帯”でした。

そんな2人に転機が訪れたのは去年のこと。弘子さんが突然「生前整理にハマった」のです。

自治体の市民講座で「遺品整理業者に依頼すると50万円以上かかる」と聞き、弘子さんは「いざという時に娘に迷惑をかけたくないから」と、家中の不要なものを処分し始めたのです。

キッチンから寝室まで、タンスの中、押し入れ、テレビ台の下、寝室の収納......。次々と積み上げられたゴミ袋は30袋以上に。誠さんは「ほどほどにね」と苦笑しながらも、「元気なうちにやるのはいいことだ」と弘子さんの熱意を見守っていました。

ところが、大掃除も佳境に入ったある日、弘子さんが叫び声をあげ、しばらくして青ざめた顔で誠さんを呼びました。

「あなた……ここに置いていたはずのお金がないの。紙袋ごと消えてるのよ」

分散していたはずの現金が、どこにもない…年末に大騒動へ

佐伯家では、“もしもの時にすぐ使えるように”と、数百万円単位の現金を銀行には預けず「タンス預金」として自宅で管理していました。弘子さんは心配性で、「全部を一カ所に置くのは危ない」と盗難リスクを避けるため複数の場所に分散して保管していたのですが、そのうち30万円分が見当たらないというのです。

「俺が知るわけないだろう!」

そう言いながら、誠さんも慌てて家中を探しました。紙袋が紛れやすい台所の棚も、季節用品の箱も、普段絶対に開けない来客用布団の奥まで、くまなく探しましたが、どこにも見当たりません。

そのうち、弘子さんは泣き出してしまいました。

「私が捨てちゃったのかもしれない……ああ、生前整理なんてするんじゃなかった」

誠さんも「警察に届けるべきか?」と頭を抱えました。

結局、年末に帰省してきた娘夫婦も巻き込む大騒ぎに。まだ運び出していないゴミ袋を開けて確認する羽目になり、お節の準備どころではなくなったのです。