「年金保険料」未納者に課せられるペナルティ

日本の公的年金制度は社会保険であり、加入と保険料の納付は義務です。したがって、たとえ個人事業主であっても、自ら国民年金に加入し、保険料を納めなければなりません。

ところが、給与から天引きされる仕組みがないこともあり、人によっては忙しさや経営状況を理由に納付を先延ばしにしたり、未納のまま放置したりするケースもあるようです。

しかし、この「未納」には、想像以上に重いペナルティがともないます。

日本年金機構から届いた“赤色の封筒”の中身

酒井宏樹さん(仮名・55歳)は個人事業主です。業務委託の仕事を複数抱え、年収は800万円ほど。

そんな彼は、数年前から仕事量が急増したことで事務処理が追いつかず、税金や社会保険の支払いが後回しになっていました。

国民年金についても「そのうち払えばいい」と考え、数ヵ月単位で未納を放置。その結果、未納額はどんどん積み上がっていきます。

――そんな生活を続けていたある日の午後。封書が溜まったポストを開けると、見慣れない“赤色の封筒”が届いていることに気づきました。差出人は「日本年金機構」と書かれています。

胸騒ぎを覚えた酒井さんが足早に開封すると、そこには「納付期限を過ぎており、速やかに納付しなければ差押えの可能性がある」との文言が記されていました。

しかも、書かれた追納すべき金額は数十万円。長期間未納を続けたために、延滞金も大きく膨れ上がっていたのです。

「まさか保険料を払わなかっただけで差押えなんて……」

青ざめる酒井さん。しかし督促状には、銀行口座の差押えなどの可能性が具体的に記載されていました。

さらに恐怖だったのは、「このまま放置すると将来の年金額が減額される」という現実です。

55歳という年齢を考えると、未納期間を残したまま60歳を迎えれば、老後資金に大きな穴が開いてしまいます。老後の生活設計そのものが崩れかねないと悟った酒井さんは、急いで年金事務所へ相談に向かいました。

窓口では分割納付が提案され、事業の収支を説明したうえで毎月定額で追納していくことに。酒井さんは「少しの怠慢がこんな結果になるなんて」と、深く後悔していました。