分散ではなく“見える化”へ――老後の資産管理で本当に守るべきこと

佐伯家の失敗から学ぶべきポイントは明確です。

「現金を持っていることで安心する」のではなく、 “どこに、いくら、何のためにあるのか”を把握できる状態こそが安心につながる ということです。

改善策①:現金保管は最低限に、銀行口座を活用する
いざという時の生活費として手元に置くのは 1〜2ヵ月分程度 がベターです。その他の資金は、普通預金・定期預金・個人向け国債など、安全性の高い金融商品に移すことで、紛失リスクを大幅に下げられます。

改善策②:現金・預貯金の「所在リスト」を作る
書式はシンプルで構いません。保管場所や金額、目的(生活費/緊急用/冠婚葬祭費など) などを記録し、家族のうち1名以上に共有しておくことが重要です。

改善策③:生前整理は“段階的に”行う
一度に大量の物を処分すると、今回のように大切な物が紛れやすくなります。高齢期の整理は時間をかけて「確認しながら捨てる」が鉄則です。

改善策④:家族も巻き込んで“見える化”する
高齢者は“自分だけで管理している”つもりでも、判断力が落ちると途端に管理不能になります。資産の見える化は、老後破綻の防止だけでなく、家族がいざという時に適切にサポートできる仕組みづくりでもあります。

年末の大掃除や生前整理は、思いがけない資産リスクが露呈するタイミングでもあります。 “ない、ない、ない!”の大騒ぎを防ぐためにも、タンス預金に頼らず、 「整理」「共有」「見える化」 を老後の資産管理の基本として取り入れることが大切です。

三原 由紀
プレ定年専門FP®