勘弁してくれ…親の地方移住の“思わぬ弊害”

ある日、父の逝去の報せを受けた京介さん。急いで現地へ飛んだものの、父が沖縄のどこでどのような人間関係を築いていたのか、そして各種の手続きをどこに頼めばよいのかもわかりません。悲しむ余裕もなく死後対応に追われ、親の地方移住がもたらす思わぬ弊害に閉口しました。

「葬儀」の仕方で親戚とトラブルに

京介さんがまず直面したのは、葬儀の問題です。病院から紹介された現地の葬儀社に任せて家族葬を考えていたところ、親族から「埼玉の菩提寺でやるべき」「墓や法事はどうするつもりだ」と猛反対されました。お寺によると、異なる宗派の葬儀をすると納骨できないというのです。

しかし、亡骸の移送は容易ではなく、航空機(那覇~羽田間)の費用と羽田から自宅(埼玉県)までの陸送費をあわせると、最低でも30万円以上はかかりそうでした。

京介さんは寺や葬儀社との調整に奔走。その結果、 沖縄の直葬センターの火葬であれば費用は77,000円程度と比較的抑えられることが判明。 遺骨は国内線の機内持ち込みが可能だったため特別な搬送料は不要とであったため、火葬のみ沖縄で行い、埼玉の菩提寺で改めて本葬と納骨法要を行うという形で、 なんとか親族の同意を得ることができました。

相続手続きも難航

なんとか葬儀を終えた京介さんでしたが、これで一段落とはいきません。

父の遺産は約2,000万円。しかし、埼玉近郊の金融機関だけでなく、沖縄の地銀にも分散して預けていたのです。各金融機関で相続手続きの手順や進捗が異なるため、何度も足を運んだり書類を郵送したりと、かなりの時間と労力を費やしました。

その他にも、賃貸物件の解約や遺品整理など、次々にやるべきことが押し寄せてきます。

埼玉と沖縄を何度も往復し、移動中は寝る間を惜しんで、溜まった自分の会社の仕事を片付ける怒涛の日々に、心身ともに疲弊した京介さん。

「親父は夢が叶えられてよかったかもしれないけど、こっちの身にもなってくれよ……もう勘弁してくれ」

自分の行動に責任を…「終活」の重要性

定年後、さまざまな理由から地方移住を選択する人が増えています。

その場合、今回の京介さんのような負担を最小限に抑えるためには、移住する本人が事前にいくつかの対策を取っておく必要があるでしょう。

一般的な相続対策である「遺言書」の作成に加え、いわゆる「終活」を行っておくことで、遺族の負担を大幅に軽減することができます。