介護離職の前にできること

親の介護を担う世代は50代が最も多く、仕事と介護の両立に悩む人は少なくありません。総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、過去1年間に介護を理由に離職した人は10万6,000人にのぼっています。

介護は精神的・肉体的な負担に加え、経済的な負担も見過ごせません。親のために介護に専念しようと離職を選択すれば、大事な収入源を失うことになります。

仕事と介護を両立するのは容易ではありませんが、まずは両立支援制度の活用を検討してみましょう。代表的な制度には「介護休業」と「介護休暇」があります。

介護休業

「介護休業」は、対象家族ひとりにつき通算93日間まで休暇を取得できる制度です。休暇は連続でなくてもよく、最大3回まで分割して取得することが可能です。さらに、受給要件を満たせば「介護休業給付金」の対象となり、賃金日額の67%相当額が支給されます。

介護休暇

「介護休暇」は、対象家族の通院やケアマネージャーとの打ち合わせなど、短時間の休暇が必要な場合に利用できる制度です。介護が必要な家族1人につき「年5日」まで取得でき、1日単位・半日単位・時間単位での利用が可能です。

※ 対象家族の範囲は、配偶者、父母、祖父母、子、孫、兄弟姉妹、配偶者の父母。

介護と仕事の両立に悩んだ際、まずは「働き続ける方法」を考えることが大切です。精神的に追い込まれると周りが見えづらくなりますが、1人で抱え込まず、会社に相談したり行政の支援を頼ったりすることで、解決の糸口が見つかる可能性があります。

母子の「その後」

さゆりさんは、会社を辞めたことを後悔しています。もし介護サービスや両立支援制度をもっと活用できていれば、介護を続けながら働くことができ、自宅を売ることもなかったでしょう。

とはいえ、時間を巻き戻すことはできません。できることをするしかないと気持ちを切り替え、施設のケアマネージャーに母の状況について相談したところ、担当を変えるなど一定の配慮をしてもらえることになりました。

さっそく多江さんに伝えると、ホッとした様子を見せてくれて安心したそうです。

落ち着きを取り戻したさゆりさんは、改めて正社員を目指し、求職活動を始めたのでした。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表