年金暮らしの主婦・安達さん(68歳・仮名)は最近、息子からの連絡に「またお金の相談かもしれない」と胸がざわつくようになりました。教育熱心な息子夫婦からの度重なる相談に“かわいい孫のため”と応えてきた結果、老後資金が大きく減ってしまったのです。生活の不安と孫のため「断れない」葛藤……。CFPの伊藤寛子氏が、資産と家族関係を守るための注意点について事例とともに解説します。
「お義母さん、いつもありがとうございます!」嫁のお礼が重すぎる…。〈年金月25万円〉68歳主婦が頭を抱える“孫連れ・息子一家の来訪”【CFPの助言】
“予算の範囲での援助”に切り替え
安達さんは夫と話し合い、「息子家族が来るたび、毎回のように行っていた援助はやめる」「入学や誕生日など、節目の支援やプレゼントのみ行う」方針を決めました。
家計を見直した結果、年間20万円までなら無理なく孫をサポートできることもわかりました。そして、思い切って息子夫婦に伝えました。
「応援したい気持ちは変わらないけれど、私たちも年金生活でそれほど余裕はないの。介護が必要になる可能性だってあるし、将来どれだけお金が必要になるかわからない。あなたたちに迷惑をかけないためにも、必要なお金は確保しておきたいから、これからは毎回じゃなく私たちができる範囲で協力させてちょうだいね」
勇気を振り絞って伝えると、息子は「無理させてたんだね、ごめん。いままで本当にありがとう」。そう言って、お嫁さんも一緒に頭を下げてくれました。
そしてその日の帰り際、「ばあば、また遊ぼうね!」と話す孫の笑顔を、“お金の不安”なしに見つめることができました。支出も心も軽くなり、以前のように自然な笑顔で孫を迎えられるようになったのです。
家族の未来を豊かにする「資産の使い方」
孫を思って援助することは悪いことではありません。しかし、援助しすぎて自分たちの暮らしが成り立たなくなれば、結局は子ども世帯に負担を背負わせることになります。
家族関係を長く穏やかに続けていくためには、「支援の線引き」は、家族を守るために大事なことです。“お金を出すこと”だけが愛情ではなく、“笑顔で会える関係を守ること”が老後の暮らしを豊かにします。
自分たちの生活をまずはしっかり守り、無理のない範囲で孫や子どものサポートを行うバランスが、家族全員の未来を豊かにする「資産の使い方」です。
伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)