老後を見据えた生活を送る50代。「残りの人生のほうが少ないかもしれない」そう気が付くと自分の持っている資産や時間、仕事などの捉え方も変化してきます。獅子にひれ氏の著書『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、老後資金の考え方について解説します。
老後資金、貯めすぎてしまった…70代、お金は十分にあるのに。夢だった「イタリア旅行」に行けず、後悔が残る人生後半戦 (※写真はイメージです/PIXTA)

「お金を使うこと」に罪悪感を持たなくてもよい

子育てを卒業し、体力もあるいま、計画的に人生を楽しむ余裕も出てきました。とくに「友人との大切な時間を過ごすこと」「新しい経験を積むこと」「いましかできない体験をすること」は、お金で買えるものではありません。お金だけでなく、若い頃とは違い、残りの時間と落ちていく体力という大切な資源の使い方を考えながら、この先の10年をいまこそ考えるときだと思います。

 

50代の私たちが見つめ直すべきは「お金を使うこと」への罪悪感かもしれません。長年染み付いた「節約は美徳」という価値観から、自分の楽しみのためにお金を使うことに後ろめたさを感じる人も多いでしょう。しかし適切な範囲での「自分への投資」は、決して浪費ではありません。健康維持のための運動や美容、心を豊かにする文化活動、人間関係を深める交際費用などは、質の高い老後生活の基盤となるのです。

 

「あの世までお金はもっていけない」とはそのとおり。「お金を貯める」ことを優先するあまり、やりたいことを先送りにしたり、我慢したりしているとしたら、もったいないと思いませんか? 老後の備えはもちろん重要ですが、自分にとって必要な老後資金がわかれば、必要以上のお金を貯める必要はありません。「お金を貯める」こと自体が目的になってしまうことなく、人生の大切な機会を逃してしまわないよう、50代のいまだからこそ「貯めること」「増やすこと」「使うこと」のバランスが大切だと感じます。計画的に将来に備えながら、いまこの瞬間も大切にする。そのような賢い選択をしていきたいと思いませんか?

 

人生は一度きり。残された時間を有意義に過ごすために、お金との上手な付き合い方を見つけていきましょう。

ワクワクする定年前準備

私は「老後2000万円問題」のニュースを見たとき、なんだか焦りのような気持ちがあって落ち着かなかったように思います。ですが、実際に老後の収支を計算し、必要な対策を講じてみると、そこまで不安に思うことはなかったと気持ちが前向きになりました。いまからできることがたくさんあると気づき、「こんなふうに暮らしていきたい」「あんな仕事にも挑戦してみたい」と具体的な未来が見えてきたからだと思います。

 

漠然とした不安は実態が見えないから大きく感じられるものです。しかし数字で現実を把握すると、意外にも解決策は身近にあることがわかります。

 

私の場合、必要な対策のひとつとして家計の見直しを行いました。携帯電話の契約を大手キャリアからサブブランドに変更しただけで、年間8万円もの節約に。通信品質はほとんど変わらないのに、これほどの違いがあることに驚きました。その分をiDeCoの掛金に充てています。

 

また、子どもが独立したことで教育費の負担がなくなった分はNISAでの投資に回しました。さらに生命保険も見直しました。子どもが独立し、高額な死亡保障は必要なくなり、医療保障を充実させる内容に変更。これだけで月々の保険料の削減ができました。このような小さな見直しの積み重ねが老後の暮らしの準備となり、安心感につながっています。

 

ただし将来の医療費や介護費を考えると、まだ不安は残ります。とくに、がんなどの重大な病気や、要介護状態になった場合の費用は予測が困難です。

 

しかし日本には充実した社会保障制度があることを忘れてはいけません。高額療養費制度や高額介護サービス費制度といった公的支援も賢く活用する視点が大切です。それでも不確定要素が多いこれらの支出に備えるためには、蓄えを病気や介護のための資金として確保しておくほうがいいのかもしれません。過度に心配しすぎて現在の生活を犠牲にするのは本末転倒です。