親の介護という、先の見えない不安な道のり。その成否は、「よきパートナー」と出会えるかにかかっているといっても過言ではありません。それは、複雑な介護制度を知り尽くした「ケアマネジャー」という存在です。しかし、その出会いは「運」や「くじ引き」のような側面もあり、担当者によっては「知りません」と一蹴されることも……。本記事では、社会福祉士の丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、親の本格的な介護が始まる前に取り組んでおきたい準備と、介護が始まった際に頼れる窓口について解説します。
高齢親の介護相談で「ないです、知りません」と一蹴…地域包括支援センターで直面する〈ケアマネ・ガチャ〉という落とし穴
人との縁を活用し、孤立を防ぐ
支援には4つ種類があります。
社会学者ハウスは、「1.情緒的サポート(例:相談にのる)、2.手段的サポート(例:移動の手助けをする)、3.情報的サポート(例:役立つ情報を調べる)、4.評価的サポート(例:相手の行動や意見を肯定する)の4つのうち少なくとも1つ以上を含む個人間の相互交渉」と定義し、ソーシャルサポートによって得られる具体的な機能を重視しています。
具体的にいうと、家族や親戚には相談に乗ってもらい、近所の人に生活の見守りや声かけ、ちょっとした手助けをしてもらい、災害が起きたらいち早く逃げろと教えてくれたり、ケアマネジャーや看護師をしている友人からはこうしたほうがいいよとアドバイスをもらい、あなたのその決断いいと思うよ、自分の思うとおりにやればいいよと励ましてくれたり、気づかせてくれたりする、といったイメージです。
どうでしょう、想像できましたか。制度もサービスも便利ですが、最終的には人に助けられるものです。これを政府は「助け合いのまちづくり」「共助の推進」などと表現しています。なかなかわかりにくいですよね。
つまり、孤立するなよ、身近な人を頼れよってことです。災害が続いているここ数十年、人によって命がつながり、その命が次の命をつないでいくシーンをたくさん見てきたでしょう。
介護も子育ても、家族のピンチ。災害とまではいわないけれど、本人や家族だけではなんともできない苦しい時期がありますので、日頃から人との縁をつないでいくことは一生を通じて忘れてはいけないことと思っていてください。
◆ここまでのまとめ◆
●孤立だけはしないように。身近な人を頼ろう
●上手に支援を受けるマインドとスキルをもとう
介護制度は流動的…「先回りしすぎ」も考えもの
それにしても、あまりにも複雑すぎる介護の制度です。定期的に改正されてきたので、突貫工事で建てた一軒家に、次々増築したツギハギだらけの家みたいで、福祉現場から少し離れるだけで情報を追随するのにひと苦労します。
まったく関係することがなかった人にとってみたら、理解するまで時間がかかるのではと思うのですが、仕方ありません。見切り発車と当時の国の担当者はそう表現していましたから。
だからといって、親であれ誰であれ、介護は負担と不安の連続。そろそろ親の介護がはじまるかもしれないからと、まだ思いっきり元気なのに先回りをして、困らないようにと介護の準備をしている人を時々見かけます。
経済雑誌で定期的に特集される介護の情報収集をはじめ、生命保険、預貯金、福祉用具、住宅改修、施設見学、そんなに張り切って準備しなくてもいいのにと。
なぜなら、介護がはじまってからのほうが使える制度もあるし、そもそも年々制度が改正されていくうえ、自治体によってもかなり流動的です。さらに民間サービスの種類も数も増えていくいま、プロでも把握しきれないことが正直多くあります。介護関連の情報収集のヒントをお伝えしていきましょう。