「介護は嫁の仕事」「相続は長男に」「定年後は悠々自適」……。昭和の時代、親の背中から学んだ「家族の当たり前」。 しかし、その価値観のせいで、人生100年時代を迎える定年世代が自身とのギャップに苦しむことも。本記事では、丸山法子氏の著書『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、定年間近の世代がお手本にしてはいけない「老後の生き方」と、なぜ今こそ価値観のアップデートが必要なのか——その背景にある社会の変化について考察します。
「軍人恩給」に豊かな年金のおかげで、100歳を超えても“大黒柱”だった母…これから老後を迎える世代を縛る、豊かすぎた「昭和の呪縛」
元気であれば限りなく働け…急激に変貌する老後の「当たり前」
職場では、一緒に働く若い世代の行動言動に「これが世代間ギャップか」と、その都度「ありえない」「常識がない」などと怒っていては身がもちません。
すっかり「当たり前」が変貌し、驚くような考え方になっていたりして、それを否定してはいけないといわれているでしょう。世の中の常識があってないようなものです。
職場だけでなく、もうすっかり生活スタイルにしみこんでいる多様性。昭和なギャグが通じない寂しさや、みんな同じ顔に見える最近のアイドルに、つい自分の老化を痛感させられますね。
話を戻します。当たり前が変わったのは職場だけでなく、むしろ社会生活のほうが激しくリアルです。65歳以上の人たちが全人口の3割を超え、地方ではそれ以上になっています。スタバもマックも高齢者がメインターゲットといっても過言ではないくらい、シニア世代が大多数を占めるようになると、家族の役割や老後の暮らし方にも、変化の波が当然やってきています。
それなのに、昭和を生きた親の教えをそのままやってしまうとしたらどうでしょう。平均寿命そのものがいまより短く、右肩上がり経済に豊かな年金額で暮らしていたり、人によっては軍人恩給があったりして、100歳超えても大黒柱みたいなおばあちゃんがいたりすると、その人のいまは幸せだし、この生き方で正解なわけです。
「ああ、私の人生は間違ってはいなかった」と思うでしょうから、子や孫世代に私のように生きろと説くでしょう。
しかし、これからは元気でさえあれば限りなく働き、ひとり暮らしになっても自宅でひとりでがんばれといわれる。物価高と並行して年々自己負担額が増える医療と介護、年々減少する年金額に、孫へお小遣いなど渡せないどころか、学校に通う孫の介護を受けて(ヤングケアラーといいます)生きていかなければならない日々。想像してみてください。
嫌な話ばかりでごめんなさい。こういう時代になったのだから、親の姿を見て学んできた価値観はオワコンです。
親のから受け継いだ「当たり前」という家族の常識は、すっかり昔話になっていますので、あまり参考にはなりません。一度足を止めて疑ってみることをおすすめします。ここでも「変わること」が必要になりますね。
◆ここまでのまとめ◆
●昭和世代からのアドバイスは、ほとんど参考にならない
●当たり前が急激に変わる! 流れの速さを理解しよう
丸山 法子
株式会社Rensa 取締役/福祉事業部 リエゾン地域福祉研究所 代表
※本記事は『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。