「甘えの連鎖」を断ち切るために必要な“たった一つのこと”

辰雄さんがいますべき対応は、毅然とした態度で「援助はできない」と明言することです。その際には、「貯金が老後生活の命綱であり、決して余裕のある金額ではない」ということを可視化して説明し、これまでの援助総額もあわせて伝えるとよいでしょう。

不自由なく育ったために、自分の恵まれた環境に気づかずにいた人であっても、具体的な数字を目の当たりにすることで親の苦労や負担を理解し、反省の気持ちを抱くようになることも少なくありません。

親子間のお金の問題は、感情と深く結びついているため、教科書どおりの正論だけでは解決しにくいものです。高齢になるにつれ、孤独への不安から「子を突き放して困るのは自分ではないか」といった葛藤が芽生えることもあるでしょう。

しかし、そのままでは健全な親子関係を取り戻すことはできません。事態の深刻さを踏まえれば、目先の要求に応えるよりも、子に真の自立を促すことこそ、本来果たすべき親の役割といえるのではないでしょうか。

親子が共に自立の第一歩を踏み出せるかどうか。まずは親の覚悟が問われます。

山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー