高齢者の単身世帯が増える一方で、「子ども世帯との同居」を望むシニアは少なくありません。医療や介護の不安を感じ、家族のそばで暮らす安心感を求めたとき、選択肢にあがるのが二世帯住宅です。しかし、購入に際しては意外な落とし穴もあって……。本記事では、Aさんの事例とともに親子リレーローンの注意点について、FPオフィスツクル代表・内田英子氏が解説します。
堪忍袋の緒が切れました…年金18万円・貯金800万円の65歳母、「二世帯住宅」を買って安堵も一転。この世で最も愛する息子が「最も憎い存在」へと変わったワケ【FPの助言】
親子リレーローンで後悔しないための「4つの確認ポイント」
親子リレーローンは、2人の収入を合算して借入できるため、高齢の親でも家を取得できるメリットがあります。しかし実際は、2人で債務返済の義務を負うことが求められます。契約が主債務者と連帯債務者に区分されることから、Aさん親子のように役割を誤解しやすい側面があります。
こうした親子間の“想定のズレ”は、決して珍しいことではありません。仕組みや責任の分担を正しく理解しないまま契約を進めると、思わぬ家計の負担や親子間のトラブルにつながることがあります。
では、トラブルを避けるためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの立場から、特に重要と考える4つの視点を紹介します。
1.返済の主軸と時期を明確に:役割の共有
まずは主債務者と連帯債務者、双方が返済の義務を負うことを確認してください。契約上だけではなく、お互いのキャリアや収入状況、ライフイベントなどと照らし合わせたうえで、返済の仕方を具体的に話し合っておきましょう。返済スケジュールを曖昧にしたままでは、家計にも人間関係にも負担が残ります。
2.名義と持分割合を実態に合わせる:登記の落とし穴
ローンの返済負担割合と登記上の持分が異なると、贈与とみなされるおそれがあります。また、持ち方によっては相続時の「小規模宅地等の特例」の対象外になる場合もあり、税務・相続の両面で専門家に相談しておくと安心です。
3.団体信用生命保険(団信)の範囲を確認:誰が、いくら“守られるか”
親子リレーローンの場合、団信に加入できるのは原則1人です。子が団信に加入するのが一般的ですが、その場合、親が亡くなると、親の債務は子どもに引き継がれます。思わぬ負担を避けるためにも、「誰が保障され、誰が残債を負うのか」を事前に確認しましょう。
4.「親亡き後」のライフプラン:住まいは引き継ぐのか
住宅ローンは「完済まで居住」が前提です。ところが、親が亡くなったあと、子が転勤・結婚・転居などで家を離れると、ライフプランと住まいの整合性が取れなくなるケースも。また、相続時にも要注意です。住宅ローンを返済し、住み続けるためには、親の持分を相続しない選択肢はありません。万が一のとき、家をどうしたいのかを確認し、リレーの後の返済計画や取得計画が、本当に親子双方のライフプランに沿っているかを見極めることが大切です。