若い世代に拡大する詐欺被害―統計が示す深刻な実態

健太郎さんが遭った被害は対面勧誘の連鎖販売取引(いわゆるマルチ取引)に類するものです。マルチ取引の相談動向は国民生活センターが公表しており、2024年度は4,117件。昨年比マイナス1,037件で減少傾向にあります。

しかし、警察庁の資料によると、非対面型の詐欺被害は急増しています。2024年の特殊詐欺の総認知件数は21,043件(+10.5%)、被害総額は718.8億円(+58.8%)。犯行の最初に用いられたツールは電話79.0%、メール・メッセージ10.0%、ポップアップ表示8.8%でした。

年代別では、若い世代への拡大が顕著です。警察庁SOS47の最新広報(2025年上半期・暫定値)は、オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺では、高齢者以上に「若い世代にも被害が広がっている」と明記。内訳はこのようになっています。

・オレオレ詐欺…20代:915件(+1,015.9%)、30代:988件(+918.6%)と急増
・架空料金請求詐欺…20代:487件(+97.2%)、30代:296件(+53.4%)と拡大

一方で特殊詐欺全体に占める高齢者(65歳以上)の割合は52.9%(−17.8pt)まで低下しています。

若年層を狙う典型手口としては、以下のようなものがあります。

・SNS・マッチングアプリで接触→外部アプリに誘導し投資名目で送金させる

・「絶対に儲かる」「AIが自動で稼ぐ」など断定的な誘い

・資金の乏しい学生に借入(学生ローン等)を勧める