60歳の星野さんは、大学生活を送る息子への仕送りのため、食費を削り、外食も控える倹約生活を続けていました。しかしそんなある日、電話口の息子が震えた声で、まさかの多額の投資詐欺被害を告白したのです。我が子を思う親の気持ちにつけ込む卑劣な手口に、同世代の親はどう立ち向かえばよいのか……。FPの青山創星氏と一緒に考えていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「父さん、ごめん…本当にごめん」都内大学に通う息子、震える声で「まさかの告白」。苦しい生活のなか〈月8万円〉仕送りを続けていた父の決断【FPの助言】
憧れの先輩からのお誘い――巧妙な罠の始まり
健太郎さんが詐欺に遭った経緯は、大学生の被害の典型的な事例の1つでした。きっかけは、同じ大学の先輩からの何気ない誘いでした。
「健太郎くん、ちょっといい話があるんだけど、今度喫茶店で会わない?」
その先輩は、健太郎さんが憧れていた経済学部の3年生。いつもブランド物を身に着け、高級な腕時計をしていることで有名でした。「投資で稼いでいる」という噂もあり、健太郎さんは密かに尊敬していたのです。
喫茶店で待っていたのは先輩だけではありませんでした。20代後半と思われる男性が同席し、自らを「投資コンサルタント」と名乗りました。
「君みたいな優秀な学生なら、絶対に成功する。僕の教え子は月20万円以上稼いでいる子もいるよ」
男性が見せたスマートフォンの画面には、確かに利益が出ているようなグラフが表示されていました。
「AIが自動で取引してくれるFXアプリなんだ。最初に50万円の教材を購入すれば、その後は完全自動で稼げる」
健太郎さんの頭の中は混乱しました。月8万円の仕送りでやりくりしている自分に、50万円など用意できるはずもありません。すると男性は言いました。
「大丈夫、学生ローンを紹介するよ。すぐに元は取れるから心配ない」
この巧妙な手口は、全国の大学生を狙った典型的なマルチ商法のパターンでした。