悠々自適な老後のために…年金の「繰下げ受給」を選択した夫婦

原田幸彦さん(仮名、71歳)は、都内郊外の戸建てに同い年の妻と2人で暮らしています。ひとり娘は夫の転勤に帯同し、現在は九州にいます。

幸彦さんは、勤めていた会社を60歳で定年退職したのち、65歳まで再雇用で働き続けました。65歳の時点で、預貯金は退職金を含めて約2,500万円、年金受給額は、夫婦合わせて約25万円の予定でした。

「ありがたいことに、自分たちは健康だ。このまま長生きしたいところだが、経済的に大丈夫なのか不安もある……」

悩んだ幸彦さんは妻と話し合った結果、「老後資金は多いほうが安心」と、年金受給の開始時期を70歳まで繰り下げることにしました。

「70歳までは我慢の5年間だな。健康に気をつけながら節約を頑張って、老後の準備をしておこう」

娘と会うことも我慢…決意の節約生活スタート

原田夫妻は、繰下げ受給後の悠々自適な老後生活をモチベーションに65歳からの5年間、預貯金を取り崩しながら節約生活に励みます。旅行も外食も我慢、友人との集まりも「年金がもらえるまでは」と見送り、娘の帰省もできるだけ遠慮してもらいました。

「我慢も努力のうち。繰り下げれば、70歳からの生活が楽になるんだから」

妻もその言葉に大きくうなずきました。老後不安が大きい現代、「もらえる年金が多いこと」は、安心の象徴のように思えました。

そうして迎えた70歳。なぜでしょう、受け取る年金が増えても想像していたほど幸せではないことに気づいてしまったのです……。