高額な治療費が必要ながん治療、公的制度は充実しているものの、それらは治療開始と同時に適用されるわけではありません。そこで、「治療」と「私生活」を両立するため、家計や働き方を見直すタイミングと、その際に見落としがちな「削ってはいけないお金」について、看護師FPの黒田ちはる氏の著書『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』(彩図社)からみていきましょう。
病気になったときの「治療費」の考え方…見落としがちな「削ってはいけないお金」とは【看護師FPが解説】
自分にとっての「大事にしたいこと」は何か?
お金のことを考える時に大事なのは、「自分は何を大事にしたいか?」を考えることです。治療をきっかけに気づくことがあるかもしれません。
治療中のお金の考え方は少し特殊です。支出というのは、ただ減らせば良いというわけではありません。収入が下がり、医療費がかかるという状況下では、「大事にしていきたいこと」と、そうではないことを整理していくことが、心身に無理なく治療を継続するためのコツだと、日々のご相談を通じて実感しています。
「お子さんの教育費だけは絶対に変えたくない」
「続けてきた生命保険は残したい」
「治療の継続のためにここは変えられそう」
このように、各ご家庭で大事にしていること、そしてそれが現実的に可能なのかを、ご相談を受ける時にはまず確認しています。
このとき大切なのは、「どこを削るか」ではなく、「どこを削らずに守るか」という視点です。支出を減らすことばかりに目を向けるとつらくなりがちですが、「ここは守りたい。そのためにはどこを調整できるか」と考える方が、前向きに生活を整えやすくなります。その際に参考にしているのが、「削ってはいけないお金」の図です。
治療を継続していくためには、医療費や社会保険料(健康保険料や年金保険料)の支払いが大切であることは、皆さんもご存じかと思います。それと同じくらい大切なのが、日々の暮らしに必要な、食費や光熱費などの「生きていくためのお金」です。
がん治療中は、こうした生活費を無理に切り詰めることが逆効果になることもあります。例えば、食費を削りすぎて体力が落ちたり、家計簿とにらめっこしてストレスが増えたりすることは、治療中の大きな負担となりかねません。
また、税金(住民税や固定資産税など)は後回しにされがちですが、滞納が続くと差し押さえのリスクもあるため、早めに自治体窓口で支払額の相談をしておくことをおすすめしています。
せっかく住宅ローンを頑張って支払っていたのに、税金の滞納で自宅が差し押さえ対象になってしまっては、元も子もありません。
大事にしていきたいことをご家族で共有し、方向性を定めていく時や、一人暮らしでどう選択したら良いか迷ったときには、FPと一緒に考えていくと良いでしょう。
黒田 ちはる
看護師FP®
