「金はあるんだから」40代になっても親に頼るのが当たり前の息子

高橋さん(75歳)は大手商社の元役員です。専業主婦として家庭を支え続けた妻の聡子さん(72歳)と、都内の一戸建てで悠々自適な生活を送っています。

現役時代の高収入に加え、投資でも堅調に資産を形成。退職金等の運用も成功し、現在の資産はおよそ3億円。夫婦合わせて月約33万円の公的年金に加え、都内に保有するマンションからの家賃収入もあります。

銀行や証券会社の担当者からも、「充分すぎるほど余裕がありますね」と太鼓判を押されるほど、経済的には安定していました。しかし、そんな高橋さん夫婦には、お金があるゆえの深刻な悩みがありました。定職に就かず、親に頼りきっている40代の一人息子の健一さんの存在です。

高橋さんは仕事一筋で、息子との時間が十分に取れなかったこともあり、幼い頃からゲームや海外旅行、有名私立大学進学など、息子が望むものは何でも与えてきました。「お金を理由に何かを諦めさせたくない」との思いで、金銭的支援を惜しみませんでした。

健一さんは大学卒業後、一度は会社に就職したものの、「人間関係が合わない」と退職。再就職がうまくいかなくても、夫婦は「暮らしに困ることはないのだから、焦らなくて大丈夫」と、息子を急かすことはありませんでした。

しかし、その優しさが裏目に出ます。健一さんは安定した仕事に就くことなく、アルバイトなどを転々する日々。安定収入がないため、生活費のすべてを親が負担し、さらに月10万円のお小遣いを渡す生活が長く続いていました。

支援をやめようとしたこともありましたが、健一さんは「金があるのに何をケチるんだ」と悪びれる様子もなく、親に頼ることが当たり前になっていたのです。