52歳で再婚…唯一の不安は「万が一の時に妻が困るかも…」

元商社営業部長の佐藤修一さん(仮名・67歳)は、長年にわたり会社一筋で働いてきました。バブル期の頃には年収800万円を稼いでいましたが、激務と出張続きが原因で48歳で離婚。慰謝料と財産分与で蓄えの大部分を失いました。

その後、52歳で看護師の恵子さん(現65歳)と再婚。恵子さんは亡き母から相続した都内の戸建て住宅を所有しており、修一さんは「今度こそ家族を大切にしたい」とその家に入る形で新生活を始めました。

転職の影響もあり、60歳定年時の年収は600万円台、退職金はわずか500万円ほど。65歳になるまでは、1年契約の年収240万ほどでなんとか繋ぎましたが、結局貯蓄は退職金の500万円のみとなりました。

年金は月額18万円、妻の恵子さんの分を含めて月29万円程度。「恵子さんの家があるから住居費はかからないし大丈夫」と考えていた修一さんでしたが、唯一の不安は「自分が先に逝ったとき、妻を困らせるのでは」という点でした。

「優しい夫」の思い込みが招いた、1,000万円消失の悲劇

というのも、遺された恵子さんが受け取れる年金は遺族年金を含めても月額12万円弱。500万円の遺産だけでは申し訳ないという気持ちがあったのです。

そこで頼みの綱にしていたのが、30代で加入した終身保険1,000万円でした。「これがあれば、万が一のときにも恵子は困らない。受取人もちゃんと変更済みのはずだ」――そう信じていた修一さんは昨年春、庭仕事中に急性心筋梗塞で急逝しました。

葬儀後、保険金請求の準備を始めた恵子さんは愕然とします。30年以上前の保険証書に記載された受取人は、前妻のままだったのです。

「主人は『受取人は恵子に変えてある』と何度も言っていました。きっと変更しているはず、とすがる思いで保険会社に確認したものの、変更されていなかったんです……」

結局、1,000万円は前妻に支払われ、恵子さんには1円も残りませんでした。修一さんが最も大切に思っていた人を、経済的に困らせる結果になってしまったのです。