「同居=安心」ではないワケ

高齢者の孤独死というと、「ひとり暮らしの高齢者」に注目が集まりがちですが、実際には「同居しているのに孤独死」するケースもあります。

たとえば、同居家族が仕事や学校などで日中不在にしている場合、高齢者が体調を崩しても気づかれない可能性があります。特に、生活リズムが違い、普段から会話が少ない家庭では、異変が察知されにくくなりがちです。

つまり、「同居=安心」とは限らないのです。むしろ同居のなかで孤立してしまうケースもあるからこそ、別の選択肢を検討する価値があります。

サービス付き高齢者住宅やシニア向けのマンションで生活することも選択肢の一つです。介護が必要な状態でなくても、何かあったときに迅速な対応をしてくれる仕組みが整っている施設で、“ひとりだけど独りじゃない”暮らしが実現できます。また、自治体によっては「高齢者の見守りサービス」や「緊急通報システム」の補助制度を設けているところもあります。

子どもからすると「親の安心のために同居している」と思っていても、実際には生活スタイルのギャップがストレスや孤立感を生み出していることもあります。これは決して親のわがままではなく、自然なすれ違いなのです。ときには親子が適度な距離を取った方が、むしろ良好な関係を築けることもあります。

そのためには、高齢になった自分がどのように暮らしたいのか、配偶者が先に亡くなった場合にどう過ごしたいのかを具体的に考えておく必要があります。そして、その希望を実現できるように、ライフプランや資産形成、リタイア後の働き方もあわせて準備しておくことが欠かせません。

孤独死を防ぐための備えとは、単なる同居や同居解消の話ではなく、「自分らしく安心して暮らすための選択肢を持っておくこと」なのです。

まとめ

老後の幸せは「同居かどうか」ではなく「安心して暮らせる環境」です。家族と一緒に暮らしていれば孤独じゃないという“昭和の常識”は、今の高齢化社会では通用しません。

同居していても会話がない、日中は完全に一人、自分の生活リズムは誰にも配慮されない。そんな中で、精神的な孤立は深まっていきます。

「家族と一緒に住んでいるのに、なぜか寂しい」

そんな思いを抱える高齢者が、今後ますます増えていくでしょう。だからこそ、老後の住まいと生活設計は「安心感」「つながり」「見守られている感覚」といった要素も含めて考える必要があるのです。

小川 洋平
FP相談ねっと