「もし私がこの家で倒れても、誰も気づかないかも…」

佐和子さんが引っ越してきた先は初めての土地で、近所付き合いもほとんどありません。名前も顔もわからない人々の中で、佐和子さんは毎日ほとんど独りで過ごしています。

散歩に出ても、誰とも言葉を交わすことなく、コンビニのレジで交わす「ポイントカードはお持ちですか?」が、唯一の会話になる日もあるくらい。

「もし、私がこの家で倒れても……誰も気づかないかもしれない」

そんな不安が、ふと頭をよぎります。具合が悪くなったとき、家族は日中いない。夜まで誰も帰らず、声をかけてくれる人もいない。その思いを、息子に打ち明けたことがありました。

「そんなことないよ、大丈夫だよ」と息子は笑って答えましたが、佐和子さんの胸のつかえは晴れることはありませんでした。

「元気そうだから」と見過ごされていますが、家族から理解してもらえることはなく、不安が消えることはありませんでした。