高齢化が進む日本では、再雇用などで定年後も働く人が増えるなか、60~70代でも「まだまだ現役」というアクティブなシニアが増えています。ただ、いくら“人生100年時代”とはいえ、老いは必ずやってくるもの。いざ深刻化してからでは対応が難しく、周りに迷惑をかけることもあるため、さまざまなことに対して「元気なうちに」備えておくことが大切です。とある夫婦の事例をもとに、具体的な老後の備え方についてみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
通帳は私が管理します…45歳銀行員の長女が73歳父に宣言。「年寄り扱いするな!」と怒鳴る父に娘が告げた“衝撃の事実”【CFPの助言】
銀行員の娘が父に抱いた“違和感”
山岸和夫さん(仮名・73歳)と同い年の妻・真理子さん(仮名)夫婦は、月23万円の年金で静かな老後生活を送っています。お金の管理は現役時代に経理の仕事をしていた和夫さんが担っていました。
そんな2人には、銀行員として働くひとり娘の涼子さん(仮名・45歳)がいます。仕事の忙しさから実家に帰る機会は少なく、連絡も乏しい涼子さんでしたが、今夏、しばらくぶりに「実家に帰る」と連絡がありました。
ひとり娘の久々の帰省とあって、大喜びの夫婦。浮足立った様子で涼子さんを出迎え、家族団らんの時間を楽しみます。
しかし、世間話に花を咲かせるうち、娘の涼子さんはふと父の言動に違和感を覚えました。
「……お父さん、ちょっと変じゃない?」
和夫さんが部屋に戻った隙を見計らって、涼子さんは母に問いかけました。すると、真理子さんは少し困ったような表情で頷きます。実は、真理子さんも少し前から、和夫さんに「なにかおかしい」と感じる場面が増えていたというのです。
「これまでずっと、お父さんにお金の管理を任せていたんだけど、最近は計算が合わなかったり、請求書の支払いを忘れたりすることが増えてきて……。だから、『これからは私がお金を管理してもいい?』って聞くんだけど、『なんだ、俺のことが信じられないのか!?』って聞き入れてくれなくて……」
すると、思いついたように真理子さんは言いました。
「そうだ! ねえ、ウチのお金、あなたが管理してくれない?」