避暑地や温泉地、海沿いなど抜群のロケーションに建てられた「リゾートマンション(リゾマン)」は、中古であれば格安の物件も多く、セカンドハウスや投資先として候補にあがります。ただし、安易に購入した結果「こんなはずではなかった」と後悔する人も少なくありません。リゾマンの魅力と必ず認識しておきたいリスクについて、60代夫婦の事例をもとにみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
定年退職金で「熱海のリゾマン」を買いました…貯金残高5,000万円・神奈川県在住60代夫婦の“正直な感想”【CFPの助言】
定年後の時間を有効活用…「現物投資」に興味を持った安藤さん
神奈川県在住の安藤吉信さん(仮名・66歳)は、同い年の妻との二人暮らしです。ひとり娘はすでに家庭を持ち、現在は千葉県で生活しています。
現役時代は製薬会社に勤めていた安藤さん。退職金を含めた貯金残高はおよそ5,000万円です。そのため老後に対する金銭的な不安はなく、年金を受け取りながら悠々自適に過ごしていました。
そんな安藤さん、忙しい日々を送っていた現役時代に「定年後は海が見えるところに家を買い、温泉にでもつかりながらゆっくり過ごしたい」と考えていたそうです。ただ、いざ定年後に自由な時間が増えると「時間があるからといって、ダラダラ過ごすのはもったいない」と、なにか新しいことに取り組みたい気持ちが強くなっていきました。そこで興味を持ったのが「現物投資」です。
書籍やYouTubeを通じて投資の勉強をスタートさせた安藤さんは、やがて金融機関や不動産会社が主催するセミナーへ参加するようになりました。
「預金のままではインフレで資産が目減りする」「不動産のような実物資産は強い」……こうした言葉を繰り返し耳にするうちに、安藤さんはすっかり投資の世界に引き込まれていきました。
いまなら100万円で譲るよ…心を動かされた「格安リゾマン」
その後、セミナーに通うなかで、安藤さんは2歳年上の男性Bさんと親しくなりました。Bさんは投資に関する知識も豊富で、聞けば現役時代から大手投資会社に勤めていたといいます。
そんなある日のこと。安藤さんはBさんから「面白い投資がある」と、熱海にあるリゾートマンションを紹介されました。
その物件はBさんが所有しているものでしたが、「安藤さんになら、100万円で譲ってもいい」というのです。
「熱海は観光地として根強い人気があるし、インバウンド需要や中国人富裕層の購入意欲も強い。いずれ時価が高騰する可能性が高いと思うんだ。どうかな? 少し考えてみてくれないか」