超高齢社会の進行にともない、有料老人ホームの施設数も増加。「介護は家族がやるもの」というかつての常識は薄れ、介護施設の利用者も増えています。しかし、施設選びを誤ると、思わぬ悲劇に見舞われることも……。76歳男性の事例をもとに、老人ホーム選びの注意点をみていきましょう。介護施設での勤務経験もある株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
施設長「申し訳ありませんが」…年金月20万円・貯金4,000万円の76歳元公務員男性が、老人ホーム入居後わずか1年で〈退去勧告〉を受けたワケ【FPの助言】
老人ホーム選びに潜む、思わぬ落とし穴
有料老人ホームには、大きく分けて次の3種類があります。
1.介護付有料老人ホーム (特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホーム)
ここは、その名のとおり介護等のサービスがついた高齢者向けの居住施設です。もしも介護等が必要となっても、施設が提供する介護サービス「特定施設入居者生活介護」を利用しながら、生活を継続することが可能です。
2.住宅型有料老人ホーム
ここは、生活支援等のサービスがついた高齢者向けの居住施設です。介護が必要になった場合には、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながらであれば、生活を継続することが可能です。
3.健康型有料老人ホーム
ここは、食事等のサービスがついた高齢者向けの居住施設です。介護が必要となった場合、契約を解除し退去する必要があります。
加藤さんは要介護認定を受けておらず、心身ともに健康であったため、3つ目の「健康型有料老人ホーム」に入居しました。この施設では食事の用意も掃除・洗濯もスタッフが担当。家事をする必要がなくなったことから身体を動かす機会が減り、入居後は部屋に閉じこもって過ごす日が増えていたといいます。
加藤さん自身も長男も、加藤さんが介護状態になるイメージを持っておらず、入居予定の施設に対して「介護が必要になっても住み続けられるのか?」という視点が欠けていたのです。
老人ホームを選ぶ際には、「介護が必要になったら」「認知症になったら」「医療行為が必要になったら」など、どのような状況になっても施設での生活が続けられるのか確認のうえ、慎重に検討するようにしましょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役