自転車操業の始まり —教育費とローンの板挟み

購入から5年が経った40歳の頃、真一さんの家計には暗雲が立ち込み始めていました。期待していた昇給は思うように実現せず、年収は620万円程度で頭打ち。一方で、子どもたちの教育費は予想以上に膨らんでいました。

この頃から、真一さんはクレジットカードの分割払いやリボ払いを多用するようになりました。「来月のボーナスで何とかしよう」「来年こそ昇進すれば給料も上がる」と自分を納得させながら、毎月の支払いをカードで回す「自転車操業」が始まったのです。

毎月の最低返済額だけでも8万円。住宅ローンと合わせると20万円の固定費が重くのしかかります。

50歳の現実 —ニュータウンがゴーストタウンへ、資産価値暴落の衝撃

真一さんが50歳を迎えた年には、地域に大きな変化が起きていました。購入時には若い家族で賑わっていた住宅地が、いつの間にか「ゴーストタウン」と化していたのです。

「子どもたちが独立して空き家になった家が目立つようになりました。新しく引っ越してくる家族もいない。近所の公園で遊ぶ子どもの声も聞こえなくなって……」真一さんの声は寂しそうです。

さらに追い討ちをかけるように、家族で何度も足を運んだ近隣の大型ショッピングモールが突然閉店を発表しました。ネット通販の普及と人口減少により来客数が激減し、わずか10年で撤退となってしまったのです。

モール跡地は今では格安スーパーとドラッグストアが入るだけの、寂しい商業施設に変わりました。「将来性のある立地」として購入した自宅周辺は、一気に過疎化が進んでしまったのです。

不動産会社に査定を依頼すると、「2,000万円程度が妥当でしょう」という衝撃的な回答。購入時の半分以下の価値しかありません。

「まさか、こんなに下がるなんて……」

真一さんは青ざめました。残債3,200万円に対し売却価格2,000万円では、1,200万円の借金が残ってしまいます。まさに「売るに売れない」状況に陥ったのです。

さらに追い討ちをかけるように、真一さんの勤務先でも厳しい現実が待っていました。「50歳以降の昇給は原則なし」という人事制度改革が発表されたのです。

ついに真一さんは、金融機関への返済相談を検討し始めました。