「家を買えば人生が変わる」—そう信じて35歳で憧れのマイホームを手に入れた川瀬真一さん(仮名・現在51歳)。世帯年収800万円、ニュータウンの一角に4,500万円の新築一戸建てを購入した時の喜びは、今でも忘れられません。しかし15年が経った今、真一さんが直面しているのは想像を絶する現実でした。FPの青山創星氏が、川瀬さんの事例を基に絶体絶命のピンチからの脱出法を探ります。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「あんなに幸せだったのに…」世帯年収800万円・35歳で〈夢の一軒家〉を購入も、15年後「廃れたゴーストタウン」「家計は自転車操業」の哀しき現実【FPの助言】
35歳、世帯年収800万円で描いた「薔薇色の住宅ローン計画」
川瀬真一さんが家を購入したのは2009年、35歳の時でした。そのエリアは、かつて大規模に開発されたニュータウンの一角。入居開始から20〜30年が経ち、第一世代の子どもたちはすでに成長して独立し始めていました。
それでも当時は、まだ空き区画で新築分譲が続いており、若い世帯が新たに流入していました。近隣には大型ショッピングモールやチェーンの飲食店が立ち並び、「便利で子育てに最適な街」として人気を集めていたのです。
「当時は近所に同世代の家族がたくさんいて、子どもたちの声が響く、活気のある住宅地でした」と真一さんは振り返ります。
購入した物件は4,500万円の新築一戸建て。頭金500万円、4,000万円の35年ローンを組みました。当時の年収は600万円、妻の美咲さん(仮名)のパート収入200万円と合わせて世帯年収800万円ほど。月々のローン返済額は12万円。夫婦の手取り月収50万円から考えると、確かに「何とかなる」範囲に思えました。
しかし、この時の真一さんは重要なことを見落としていました。35年ローンということは、完済時は70歳。「その頃は年金ももらえているし、きっと何とかなるだろう」程度の認識で、70歳時点での収入や生活費がどうなっているかまでは深く考えていなかったのです。
実際、当時の真一さんに「70歳まで住宅ローンを払い続けることになりますが大丈夫ですか?」と質問しても、「まだ35歳だし、そんな先のことは分からないよ」と答えていたに違いありません。
果たして、彼の楽観的な計画通りに事は運んだのでしょうか。