(※写真はイメージです/PIXTA)
自ら“沼”にハマりにいく理由
一方で、デジタル&SNSネイティブなZ世代の多くは、物心ついたころからネット上で「無料」で得られる情報やサービスにふれてきたため、「まずはタダで楽しめないか」と探す習慣がついています。また、先のハルキさんがハマるゲームのように、入口は無料でも、高度なサービスやアイテムには課金される(フリーミアム)、あるいは数か月後には有料に切り替わる、といったビジネスモデルも増えました。
後者の場合は、「あと2日で無料期間が終わる」など時間に追われやすく、さほど見たく(読みたく)ないコンテンツでも「消費しなければ」と焦りやすい。今回取材した中にも、「(無料の)残り時間が少ないから、1.5倍速で全部見なきゃって夜更かししちゃう」(サクラさんほか)といった声が相次ぎました。こうした行動もまた、Z世代を「ケチでせっかち」や「タイパばかり気にする」などと他世代を勘違いさせるのかもしれません。
もっとも、初めは「無料の範囲で」と自制しても、そのタガが外れることもあります。
先ほどのハルキさんも、「つい課金しちゃった」と発言していましたが、ほかにも、漫画アプリの無料読み放題や、アニメストアの無料お試し期間に釣られたというZ世代から、「まんまとサブスク契約したオレ」や「結局は『沼って』、有料(契約)に移行する愚かさ」など、自分を「バカなオレ(私)」のニュアンスで評する若者が、複数見られました。
ちなみに「沼る」とは、何かに夢中になり、沼にハマるようにどっぷり浸かって抜け出せなくなること。弊社もよくご一緒する大手ゲーム会社などでは近年、脳科学の研究が進み、「コアループ理論」、すなわち心地よいアクション(ジャンプ、ブロック崩しほか)を繰り返させる(ループ)ことで、脳に快感をおぼえさせ、ドーパミンを放出させ、ユーザーが「もっとやりたい」と「沼る」ようなゲーム設計をするようになりました。
Z世代の多くは、そうした大人たちの企みに気づきながら、あえて「ハマってあげる」ニュアンスです。だからこそ「まんまと」や「つい」「愚か」など、自身を自虐的に形容しながらも、「わかっているけどハマっちゃう。そんな自分って、しょうがないなぁ」など、半ば照れながらも、どこか誇らしげなのでしょう。